『ホームランが聞こえた夏』(WOWOW)😉

144分 2011年 韓国

韓国の高校球界で天才投手ともてはやされたチャン・ギボムが突発性難聴を患い、聾学校へ編入させられる。
かつては健常者で、先天性聾者とは違うというプライドを捨てきれないギボムは、聾学校の野球部には入らず、喧嘩に明け暮れる荒んだ毎日を送っていた。

そこへ、何度も酒席で暴行事件を働き、休場処分を受けたプロ野球LGツインズのエース、チョン・ジェヨンがコーチとしてやってくる。
聾学校のボランティア活動で処分の軽減を企んだマネージャー、チョ・ジンウンの差し金で、ジェヨンも最初のうちはまったくやる気を見せない。

そのジェヨンがひょんなことから少年院送りになりかけていたギボムを助けて、野球をやろうと誘い、やがて野球部のコーチの仕事にのめり込んでゆく。
聾者の子供たちが懸命に練習を繰り返し、ジェヨンもコーチをやりがいを感じるようになっていたとき、突然プロ野球から永久除名の処分がくだされた。

大体はお定まりの展開で、一昔前の日本製青春映画のようなベタな演出も多い。
野球の練習を浜辺でやり、ユニフォームはもちろん、木製のバットや革製のグローブを海水に濡らしてしまうなど、あまりに非常識な場面も目につく。

しかし、韓国の高校野球事情をこれほど詳しく描いた映画もほかにないだろう。
球場のフェンスが全面ラバーになっていて感心させられる半面、生徒が平気で審判に食ってかかるなど、初めてわかった日本との違いが非常に興味深かった。

さらにオチがうまい。
寸前で察しがつくが、これはちょっと思いつかなかった。

監督は傑作ミステリー『黒く濁る村』(2010年)のカン・ウソクで、テンポよくまとめている。
あの映画ではとんでもない悪人だったジェヨン、ユソンも今回は善人役、しかもまたカップルを演じており、なかなかいい味を出している芸域の広さには感心させられた。

野球好きは見ておいたほうがいい一篇。
韓国以上の高校野球大国であるはずの日本で、どうしてこういう映画が作られないのかな、と思っちゃいますね。

お勧め度はBです。

旧サイト:2012年12月4日(火)Pick-up記事を再録、修正

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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