BS世界のドキュメンタリー『ダビンチ 幻の肖像画』(NHK-BS1)🤗

Leonard: The Mystery of the Lost Portrait
45分(オリジナル版52分) 2018年
 制作:フランス=ZED & SYDONIA / ARTE FRANCE / NHK(国際共同制作)
初放送:2019年11月4日(月)午後11時00分~11時45分
再放送:2021年4月15日(木)午後3時5分〜3時50分

レオナルド・ダヴィンチの逝去からちょうど500年がたった2008年、イタリアの絵画コレクターから、美術史家ニコラ・バルバテッリの元へ鑑定依頼が届く。
バルバテッリがサレルノにあるコレクターの自宅に足を運び、約100点の絵画を鑑定したあと、コレクターは最後に毛布に包んだ1枚のカンバスを持ってきた。

その絵を一目見た瞬間、バルバテッリは「レオナルド・ダヴィンチの自画像だ」と直感したという。
ルネサンス時代にダヴィンチが活動していたフィレンツェのウフィツィ美術館に展示されているダヴィンチの肖像画に瓜二つだったからだ。

ただし、ウフィツィの肖像画はダヴィンチの死後100年経ってから描かれた複製画であることが、1938年に証明されている。
すると、新たにサレルノで発見された肖像画こそ、ダヴィンチの手による自画像の新作なのだろうか。

この肖像画はサレルノのルネサンス時代の地名にちなみ、「ルカーニアの肖像画」と呼ばれて、一躍世界の美術界の注目の的となった。
現存するダヴィンチの絵画は20点に満たず、彼の肖像も記録として残っていない上、巷間流布されている自画像とされてきた作品にも、最近の研究によって疑問符が付けられている。

例えば、われわれがよく知っているトリノ王立図書館所蔵の作品、禿頭と豊かな顎髭の「赤いチョークの自画像」も、近年の調査で1490年代に描かれたとする説が有力だ。
これが事実とすると、当時のダヴィンチはまだ40歳で、「自画像」の人物は老け過ぎている。

イギリスのウィンザー城には、フランチェスコ・メルツィーが描いたダヴィンチの肖像画が所蔵されている。
貴族の息子だったメルツィーは、1508年にフィレンツェでダヴィンチの工房に迎えられ、生涯弟子として仕えており、彼が描いたダビンチ像は唯一信頼できる肖像画だとされてきた。

もしルカーニアの肖像画が本当にダヴィンチの自画像だと証明されれば、世紀の大発見ということになる。
バルテッリは自分の直感が正しいことを証明するべく、科学的な調査を開始し、X線検査、絵具やカンバスの素材の分析、カンバスの裏側に記されていたダヴィンチのものと思しきメモの筆跡鑑定など、あらゆる面から肖像画を〝解剖〟していく。

本作は、この調査の過程にダヴィンチの半生を描いた再現ドラマを挿入し、ルカーニアの肖像画が真作である可能性をじっくりと検証している。
結論に納得できるかは視聴者次第だが、大変完成度の高い美術史ミステリーのドキュメンタリーであり、見応えは十分。

オススメ度A。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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