『第三の時効』横山秀夫😁😳

発行:集英社 集英社文庫 定価720円=税別
第1刷:2006年3月25日 第32刷:2020年10月20日
単行本発行:2003年6月 集英社

〈D県警〉ものと並ぶ横山秀夫の人気シリーズ、〈F県警強行犯シリーズ〉の第一弾となった連作短編集。
D県警シリーズでは鑑識、人事、広報、新人教育担当者など、どちらかと言えば警察組織の黒子や裏方を主要キャラクターに据えた作品が多かったが、こちらはバリバリの強行犯担当刑事が登場する。

巻頭の『沈黙のアリバイ』には、いったん刑事による取調で殺人を自白しておきながら、初公判で無罪を主張し、捜査第一課が窮地に陥る。
取調の録音が重要な意味を持っており、切れ者の班長が容疑者のトリックを暴くどんでん返しが面白い。

『密室の抜け穴』は文字通り、逃げ場所がない密室状態のマンションで行われた殺人の捜査を描いた一編。
いったい容疑者はどこに消えたのか、F県警の小会議室で腕っこきの刑事たちが様々に推理を巡らせているうち、実は〝もう一つの密室〟があるというからくりが見えてくる。

刑事たちの人物像より謎解きに主眼が置かれているぶん、純粋なミステリーとして楽しめる作品が多い。
D県警に勤務している警察官たちのように、それぞれの刑事の人物像をもっと掘り下げてほしいという憾みも残ったが、それはF県警強行犯シリーズの新作を読んでのお楽しみ、ということかな。

😁😳

2021読書目録
面白かった😁 感動した😭 泣けた😢 笑った🤣 驚いた😳 癒された😌 怖かった😱 考えさせられた🤔 腹が立った😠 ほっこりした☺️ しんどかった😖 勉強になった🤓 ガッカリした😞

6『顔 FACE』横山秀夫(2002年/徳間書店)😁😢
5『陰の季節』横山秀夫(1998年/文藝春秋)😁😢🤓
4『飼う人』柳美里(2021年/文藝春秋)😁😭🤔🤓
3『JR上野駅公園口』柳美里(2014年/河出書房新社)😁😭🤔🤓
2『芸人人語』太田光(2020年/朝日新聞出版)😁🤣🤔🤓
1『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳(2000年/草思社)😁😳🤔🤓

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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