『エジソンズ・ゲーム』(WOWOW)🤨

The Current War
108分 2017年 アメリカ:101スタジオズ 日本公開:2020年 KADOKAWA

原題の「電流戦争」“The Current War”は、歴史家に“War of Currents”と呼ばれており、アメリカ産業史のターニングポイントとなった抗争劇である。
電気を全米に供給するには直流送電と交流送電のどちらが有用か、直流派のトーマス・エジソン、交流派のジョージ・ウェスティングハウスとニコラ・テスラが市場開拓と自社の存続をかけて激しい鍔迫り合いを繰り広げる。

歴史上の偉人を演じるのは、エジソンがベネディクト・カンバーバッチ、ウェスティングハウスがマイケル・シャノン、テスラがニコラス・ホルトと、いずれも当代きっての演技派スター。
電気の世界的なお披露目が行われたシカゴ万博をはじめとする当時のイベントや街並、ウェスティングハウスの工場、エアブレーキを使用した蒸気機関車などを再現した美術も素晴らしい。

しかし、肝心の歴史ドラマ、人間群像劇としての掘り下げ方がいまひとつで、短いショットの積み重ねで次から次へと話が飛ぶため、ドキュメンタリーの再現ドラマを観ているかのような印象を受けた。
エジソンの先に白熱電球を発明した人物がいたこと、名誉にこだわって困窮していたエジソンをウェスティングハウスが救済しようとしていたことなど、事実かどうかはともかく、興味を惹かれるエピソードが多いのに、いずれも突っ込み不足に終わっている。

なお、本作は性的暴行容疑で有罪判決を受けて服役中のプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが編集上の強権を行使した最後の作品でもある。
ワインスタインが逮捕されたあと、アルフォンソ・ゴメス=レホン監督の師匠に当たり、本作の製作総指揮を務めるマーティン・スコセッシの後押しによって、ようやく自分のディレクターズ・カット版の公開にこぎつけたという。

しかし、本作の根本的な問題は、ワインスタインの介入とは別のところにあると言わざるを得ない。
いろいろな意味でもったいない映画でした。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る