東京国立博物館へ行ってきた③特別展『桃山−天下人の100年』編

上野公園の紅葉はいまが見ごろ
東京国立博物館本館前のユリノキ

先月に続いて、また東京国立博物館に足を運んできました。
季節外れのポカポカ陽気の中、上野公園は紅葉が見ごろになっていることもあり、平日にもかかわらずそこそこの人出。

平成館の玄関に貼り出された特別展のポスター

今回の目的は平成館で開催中の特別展『桃山−天下人の100年』。
安土桃山時代(室町幕府壊滅の1573年から江戸幕府開府の1603年までの30年間)の絵画、茶器などの工芸品から、刀剣、甲冑など戦国武将の武具まで、この時代が生んだ美術品を一堂に集めた大掛かりな催しです。

最も印象に残るのは巨大な屏風で、入口を入った早々、狩野永徳の『洛外名所遊楽図屏風』、『洛中洛外図屏風』に圧倒される。
後期(11月3〜29日)展示の目玉のひとつで、ポスターやチラシに使われている『唐獅子図屏風』がまた素晴らしい。

重要文化財に指定されている織田信長像、豊臣秀吉像、毛利元就像、足利義輝像、徳川家康像など、本やテレビで何度も目にした武将たちの肖像画も、初めて本物を見た。
現在、一般的に馴染みの深い秀吉や家康の肖像画は、実は死後に描かれたもので、一周忌の式典に飾るため、立派な武将に見えるようイメージアップされているらしい。

家康が最も気に入っていたという『関ヶ原合戦図屏風』は、この時代のジオラマを見ているような面白さである。
また、狩野元信以降、3代に渡って描かれた『四季花鳥図屏風』を3作品並べて展示し、狩野派の画風と手法がどのような変遷を遂げたかがよくわかる。

意外だったのは、この時代の『日本図・世界図屏風』が、割と正確に描かれていること。
とくに『世界図』のほうは、恐らくスペインやポルトガルから伝来した地図を参考にしたからだろうが、のちの〝日本製世界地図〟のように日本が地図の真ん中ではなく、ちゃんと極東(つまり右端)に描かれている。

全展示品は約230点にも及び、屏風以外にも印象に残った展示品が多く、当時の日本人の美意識の移り変わりが自然とインプットされていくような感覚を覚えた。
口コミで評判が広まっているのか、平日の昼間、しかも感染防止対策として人数制限が敷かれているにもかかわらず、場内はなかなかの賑わい。

館内の注意書には、感染防止対策のため、90分以内に観覧を終えるようにと書かれていたが、ひとつひとつちゃんと見るには短過ぎる。
ちなみに、私はたっぷり2時間かかりました。

写真撮影は全面禁止、公式ホームページにも展示品はほんの少ししか紹介されていないので、きょうのBlogは記憶だけで書いています。
3000円の図説がせめて2000円前後ぐらいなら買って帰ったんですが。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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