『ホテル・ムンバイ』(WOWOW)🤗

Hotel Mumbai 120分 2019年
 オーストラリア、インド、アメリカ 日本配給:ギャガ 

2001年に勃発したアメリカ同時多発テロ事件は多くの日本国民がいまでも生々しく記憶しているが、その7年後にインドで起こったムンバイ同時多発テロを覚えている人は何人いるだろうか。
恥をしのんで打ち明けると、僕はこの映画を観るまで、すっかり忘れていた。

2008年11月、イスラム教系テロ組織のメンバーがムンバイに上陸、CTS(チャトラパティー・シバージィ・ターミナス)駅でのテロ行為を皮切りに、世界中からセレブや富豪が集まるタージマハル・ホテルを襲撃する。
テロリストは全員10代の少年で、「ホテルにいる者は人間ではない」と洗脳されており、パキスタンにいる「ブル兄弟」に命令されるまま、客も従業員も容赦なく次々に射殺。

主人公の給仕アルジュン(デーヴ・パテール)はレストランでこの事件に遭遇し、客を6階のラウンジに匿ってやり過ごそうとする。
彼はスクーターで出勤する前に業務用の靴を落としており、オベロイ料理長(アヌパム・カー)にサイズの合わない靴を借りていたため、駆けずり回っている最中、足にマメができてしまう。

この設定はブルース・ウィリスが足の裏をケガしてハラハラさせる『ダイ・ハード』(1988年)を彷彿とさせる。
中心的役割を果たす客のキャラクターも、典型的アメリカ人の良き夫デヴィッド(アーミー・ハマ-)、貞淑で美しいデヴィッドのインド人妻ザーラ(ナザニン・ボニアディ)、そのザーラに色目を使う粗野で下品で嫌みったらしいロシア人ワシリー(ジェイソン・アイザックス)など、いかにもアメリカ映画的なタイプが多い。

そのため、『ダイ・ハード』のように、彼らも最終的には都合良く助かるのではないかという想像がつい無意識のうちに頭をもたげてくるのだが、画面の中では無慈悲なまでに、何の罪のない人たちがあっけなく殺されていく。
一方で、無差別殺人を繰り返したイスラム教徒のテロリストたちも素顔はごく普通の少年で、ホテルから貧乏な実家に電話しては、「組織」から報酬が振り込まれていないかと何度も確かめる姿が健気で哀れだ。

ここでは殺す側と殺される側とがまったく別の世界に生きていて、コミュニケーションの成立する余地がまったくない。
ただ一度、少年たちが殺人を躊躇するのは、死を覚悟したザーラがイスラム教の歌を口ずさんだときだけだった。

映画的飛躍や誇張とおぼしき場面も目につくが、現代のテロリズムがどのようにして行われているかを描いた力作であることは確か。
アンソニー・マラスという監督の演出はリアリティたっぷりで、テンポもよく、実際のニュース映像を織り交ぜた編集も迫真の効果をあげている。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

110『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018年/松竹)B
109『閉鎖病棟−それぞれの朝−』(2019年/東映)C
108『真実』(2019年/仏、日)A
107『氷の微笑』(1992年/米)B
106『チャーリーズ・エンジェル』(2019年/米)C
105『FBI:特別捜査班 シーズン1 #22対決の時』(2019年/米)C
104『FBI:特別捜査班 シーズン1 #21隠された顔』(2019年/米)B
103『FBI:特別捜査班 シーズン1 #20エジプトの要人』(2019年/米)B
102『轢き逃げ 最高の最悪な日々』(2019年/東宝)B
101『蜜蜂と遠雷』(2019年/東宝)B
100『ワン・カップ・オブ・コーヒー 栄光のマウンド』(1991年/米)A
99『ドリーム・ゲーム 夢を追う男』(1991年/米)B※
98『スラッガーズ・ワイフ』(1985年/米)B
97『死霊のはらわた』(2013年/米)C※
96『死霊のはらわた』(1981年/米)A※
95『脱出』(1972年/米)A※
94『ラスト・ムービースター』(2018年/米)B
93『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン3』(2015年/米)A
92『FBI:特別捜査官 シーズン1 #19白い悪魔』(2019年/米)B
91『FBI:特別捜査官 シーズン1 #18ラクロイ捜査官』(2019年/米)C
90『FBI:特別捜査班 シーズン1 #17秘密のデート』(2019年/米)C
89『世界の涯ての鼓動』(2017年/独、仏、西、米)C
88『殺人鬼を飼う女』(2019年/KADOKAWA)D
87『軍旗はためく下に』(1972年/東宝)A※
86『イングリッシュ・ペイシェント』(1996年/米)B
85『ラスト、コーション』(2007年/台、香、米)A
84『サンセット大通り』(1950年/米)A※
83『深夜の告白』(1944年/米)A
82『救命艇』(1944年/米)B※
81『第3逃亡者』(1937年/英)B※
80『サボタージュ』(1936年/英)B※
79『三十九夜』(1935年/英)A※
78『ファミリー・プロット』(1976年/米)A※
77『引き裂かれたカーテン』(1966年/米)C
76『大いなる勇者』(1972年/米)A※
75『さらば愛しきアウトロー』(2018年/米)A
74『インターステラー』(2014年/米)A
73『アド・アストラ』(2019年/米)B
72『FBI:特別捜査班 シーズン1 #16ラザロの誤算』(2019年/米)C
71『FBI:特別捜査班 シーズン1 #15ウォール街と爆弾』(2019年/米)C
70『FBI:特別捜査班 シーズン1 #14謎のランナー』(2019年/米)D
69『FBI:特別捜査班 シーズン1 #13失われた家族』(2019年/米)D
68『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン2』(2014年/米)A
67『記憶にございません!』(2019年/東宝)B
66『新聞記者』(2019年/スターサンズ、イオンエンターテイメント)B
65『復活の日』(1980年/東宝)B
64『100万ドルのホームランボール 捕った!盗られた!訴えた!』(2004年/米)B
63『ロケットマン』(2019年/米)B
62『ゴールデン・リバー』(2018年/米、仏、羅、西)B
61『FBI:特別捜査班 シーズン1 #12憎しみの炎』(2019年/米)B
60『FBI:特別捜査班 シーズン1 #11親愛なる友へ』(2019年/米)B
59『FBI:特別捜査班 シーズン1 #10武器商人の信条』(2018年/米)A
58『FBI:特別捜査班 シーズン1 #9死の極秘リスト』(2018年/米)B
57『病院坂の首縊りの家』(1979年/東宝)C
56『女王蜂』(1978年/東宝)C
55『メタモルフォーゼ 変身』(2019年/韓)C
54『シュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年/米)C
53『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1』(2013年/米)A
52『FBI:特別捜査班 シーズン1 #8主権を有する者』(2018年/米)C
51『FBI:特別捜査班 シーズン1 #7盗っ人の仁義』(2018年/米)B
50『FBI:特別捜査班 シーズン1 #6消えた子供』(2018年/米)B
49『FBI:特別捜査班 シーズン1 #5アローポイントの殺人』(2018年/米)A
48『アメリカン・プリズナー』(2017年/米)D
47『夜の訪問者』(1970年/伊、仏)D
46『運命は踊る』(2017年/以、独、仏、瑞)B
45『サスペクト−薄氷の狂気−』(2018年/加)C
44『ザ・ボート』(2018年/馬)B
43『アルキメデスの大戦』(2019年/東宝)B
42『Diner ダイナー』(2019年/ワーナー・ブラザース)C
41『ファントム・スレッド』(2017年/米)A
40『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年/米)B
39『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年/米)A
38『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年/米)A
37『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
36『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
35『下妻物語』(2004年/東宝)A
34『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
33『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
32『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
31『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
30『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
29『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
28『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
27『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
26『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
25『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
24『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
23『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
22『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
21『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
20『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
19『大脱出2』(2018年/中、米)D
18『大脱出』(2013年/米)B
17『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
16『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
15『グリーンブック』(2018年/米)A
14『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
13『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
12『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
11『前科者』(1939年/米)C
10『化石の森』(1936年/米)B
9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A 

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』、WEDGE Infinity『赤坂英一の野球丸』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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