『インターステラー』(WOWOW)🤗

Interstellar 169分 2014年 アメリカ=パラマウント・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザース 

劇場公開された去年(2014年)、観に行きたいなと思いながら、上映時間の長さに恐れをなして足が伸びなかった1本。
クリストファー・ノーランが製作、監督、脚本(メーンライターは弟のジョナサン)を務めた本格的ハードSFである。

舞台は全世界が荒廃し、人類滅亡の危機にさらされている近未来のアメリカ。
開巻、何人もの老人たちのインタビュー映像が流れて、この映画が元宇宙飛行士マシュー・マコノヒーの〝過去〟の英雄譚であることが示唆される。

ここから本篇に入ってマコノヒーの冒険物語がスタート、序盤に様々な布石が打たれたのち、すでに壊滅した思われていたNASAの秘密基地に入り込む。
観終わったあとで振り返ると、このくだりはいささか回りくどく、思い切って端折ったほうがよかったかもしれない。

NASAでは人類が移住できる惑星がいくつか別の銀河にあることを探知、それぞれの惑星を調査させるために科学者を送り込んでいた。
その中で最も有望な惑星へ行き、人類が居住可能であることを確認してもらいたい、とNASAの教授マイケル・ケインに要請され、マコノヒーは科学者アン・ハサウェイらとともに宇宙船で別の銀河へと旅立つ。

この映画のハードSFとしての特色が前面に出てくるのはやっとここからだ。
特殊相対性理論により、宇宙を航行中のマコノヒーが年齢を重ねる速度が遅くなる一方、地球に残してきた息子や娘は反比例するように急速に(実際はごくふつうに)成長し、老化することになる。

マコノヒーがほとんどトシをとらないまま探索を続けている間に、息子も娘も大人になり、結婚して、子供(つまりマコノヒーにとっての孫)をもうける。
その間、惑星の探査は遅々として進まず、やがて、マコノヒーの元に送られてきた動画には、父が帰ってこないと思い込んで泣く娘、子供が死んだと嘆く息子の姿が映っていた。

早く新天地の惑星を見つけて地球へ帰らなければ、子供たちは自分よりも先に年老いて死んでしまう。
こうしてこの映画ならではの危機的状況が前面に出てくる中、さらに絶望的な計画の裏側が明らかになる。

人類が居住可能な新たな惑星などない、この大がかりな探索も最初から失敗するものとわかっていた。
ケインはそれを承知の上で、マコノヒーやハサウェイを数十年もかかる宇宙の彼方に送り出していたのだ。

マコノヒーとハサウェイが降り立った惑星にはマット・デイモンが待ち受けていたが、この計画の裏側を知っていた彼は、マコノヒーたちを殺して自分だけ地球へ帰ろうとする。
まことにスケールが大きく、ノーランのパワフルかつサスペンスフルな演出はいつもながらさすがの力技で、最後の最後までぐいぐい引っ張られる。

本作の構想はブラックホールの研究で有名なキップ・ソーン、映画プロデューサーのリンダ・オブストによって練り上げられ、ジョナサン・ノーランが脚本を執筆。
当初はスピルバーグが監督する予定で、彼に指名されたジョナサンは、カリフォルニア工科大学に通って相対性理論を勉強しながら、実に4年間かけてシナリオを書き上げたという。

CGやVFXなどのデジタル技術が極限まで進化した現在、映画を面白く見せられるかどうかは、やはり着想と脚本、つまり人間の心と頭にかかっている。
そういうことを改めて教えてくれた映画だった。

お勧め度はA。

旧サイト:2015年12月2日(水)付Pick-upより再録

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

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27『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
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22『大脱出』(2013年/米)B
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14『スノーピアサー』(2013年/韓、米、仏)A※

13『前科者』(1939年/米)
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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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