『さらば愛しきアウトロー』(WOWOW)🤗

The Old Man & the Gun 93分 2018年 
アメリカ=フォックス・サーチライト・ピクチャーズ 日本配給:2019年 ロングライド

本作の見どころは、何と言ってもロバート・レッドフォードの顔である。
かつて30代だった1970年代、『明日に向かって撃て!』(1969年)、『大いなる勇者』(1972年)、『スティング』(1973年)、『華麗なるヒコーキ野郎』(1975年)といった映画史に残る作品に主演し、アメリカを代表する二枚目スターが、いまや80代に達したしわくちゃの顔である。

舞台は1980年代初頭のアメリカ中西部。
テキサスの片田舎で銀行強盗を働いたレッドフォードが、パトカーの追跡をまくために逃走車を乗り捨て、車がエンストして途方に暮れている老女シシー・スペイセクに、親切心を装って歩み寄る。

撮影当時、レッドフォード81歳、スペイセク68歳。
自分が銀行強盗であることを隠し、デタラメの履歴を語るレッドフォードの顔を、ジョー・アンダーソンのキャメラは、まるで巨大な彫像を舐めるかのように、画面のフレームに入りきらないほどの超クローズアップで映し出す。

そのレッドフォードの顔が、カッコいい。
こういうカッコよさがあるのかという顔をしている。

そして、そんなレッドフォードの話が嘘八百だと薄々察していながら相槌を打っているスペイセクの笑顔もまた、とても可愛い。
スペイセクに好意を抱いたレッドフォードが彼女をカフェに誘い、自宅に足繁く通う仲にまで発展させる過程がごく自然に感じられる。

スペイセクの子供たちはすでに独立して家を出ており、彼女は夫から受け継いだささやかな牧場を営んでいる。
早く牧場を売り払い、自分たちのそばでのんびりと余生を過ごしてほしい、と子供たちには勧められているが、スペイセクは言う。

「私も、人生はそんなものかと思ってたわ。
結婚して、子供を育てて、もう大丈夫だ、あとはゆったりと余生を生きればいいって。

でも、違う。
いまは一日が終わるたび、人生でやりたいことはないか、あるんだったらやっておこう、いまのうちならまだできるんだからって思うのよ」

レッドフォード演じるフォレスト・タッカーは実在の人物で、10代だった1930年代から強盗と脱獄を繰り返し、60代になってからも仲間と「黄昏ギャング団」を結成。
再三強盗を働きながら、犯行現場では常に礼儀正しく、銃をチラつかせながらも笑みを絶やさない〝紳士強盗〟として知られていた。

エンディングは『明日に向かって撃て!』と『華麗なるヒコーキ野郎』を足して一捻り加えた絶妙の幕切れ。
全体を通して、1980年代の映画を彷彿とさせるアンダーソンの渋い色調のルックも効いている。

それだけに、本作のテイストを著しく損なっているこの邦題はいただけない。
本作を放送した『W座からの招待状』のMC小山薫堂氏も言っていたように、文豪ヘミングウェイの名作にあやかった原題のまま『老人と銃』として公開するべきだった。

なお、レッドフォードは、本作を俳優としての引退作にすると公言。
でも、もしかしたらクリント・イーストウッドみたいにもう1〜2本作るかもしれませんね。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

74『インターステラー』(2014年/米)A
73『アド・アストラ』(2019年/米)B
72『FBI:特別捜査班 シーズン1 #16ラザロの誤算』(2019年/米)C
71『FBI:特別捜査班 シーズン1 #15ウォール街と爆弾』(2019年/米)C
70『FBI:特別捜査班 シーズン1 #14謎のランナー』(2019年/米)D
69『FBI:特別捜査班 シーズン1 #13失われた家族』(2019年/米)D
68『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン2』(2014年/米)A
67『記憶にございません!』(2019年/東宝)B
66『新聞記者』(2019年/スターサンズ、イオンエンターテイメント)B
65『復活の日』(1980年/東宝)B
64『100万ドルのホームランボール 捕った!盗られた!訴えた!』(2004年/米)B
63『ロケットマン』(2019年/米)B
62『ゴールデン・リバー』(2018年/米、仏、羅、西)B
61『FBI:特別捜査班 シーズン1 #12憎しみの炎』(2019年/米)B
60『FBI:特別捜査班 シーズン1 #11親愛なる友へ』(2019年/米)B
59『FBI:特別捜査班 シーズン1 #10武器商人の信条』(2018年/米)A
58『FBI:特別捜査班 シーズン1 #9死の極秘リスト』(2018年/米)B
57『病院坂の首縊りの家』(1979年/東宝)C
56『女王蜂』(1978年/東宝)C
55『メタモルフォーゼ 変身』(2019年/韓)C
54『シュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年/米)C
53『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1』(2013年/米)A
52『FBI:特別捜査班 シーズン1 #8主権を有する者』(2018年/米)C
51『FBI:特別捜査班 シーズン1 #7盗っ人の仁義』(2018年/米)B
50『FBI:特別捜査班 シーズン1 #6消えた子供』(2018年/米)B
49『FBI:特別捜査班 シーズン1 #5アローポイントの殺人』(2018年/米)A
48『アメリカン・プリズナー』(2017年/米)D
47『夜の訪問者』(1970年/伊、仏)D
46『運命は踊る』(2017年/以、独、仏、瑞)B
45『サスペクト−薄氷の狂気−』(2018年/加)C
44『ザ・ボート』(2018年/馬)B
43『アルキメデスの大戦』(2019年/東宝)B
42『Diner ダイナー』(2019年/ワーナー・ブラザース)C
41『ファントム・スレッド』(2017年/米)A
40『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年/米)B
39『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年/米)A
38『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年/米)A
37『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
36『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
35『下妻物語』(2004年/東宝)A
34『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
33『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
32『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
31『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
30『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
29『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
28『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
27『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
26『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
25『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
24『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
23『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
22『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
21『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
20『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
19『大脱出2』(2018年/中、米)D
18『大脱出』(2013年/米)B
17『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
16『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
15『グリーンブック』(2018年/米)A
14『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
13『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
12『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
11『前科者』(1939年/米)C
10『化石の森』(1936年/米)B
9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』、WEDGE Infinity『赤坂英一の野球丸』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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