『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(WOWOW)🤗

Spider-Man: Far From Home 129分 2019年
アメリカ=ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント

本欄の前項で取り上げた『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)の続編で、マーベル・コミックスのスパイダーマン実写映画版第6作、再リブート版第2作、さらにマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)・シリーズとしては第23作。
それ以上にファンにとって重要なのは、本作が『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)の後日談に当たっているということだ。

『エンドゲーム』はシリーズ最強の敵サノスとアベンジャーズの最終決戦というべき内容になっており、シリーズを支えてきた主要スーパーヒーローの何人かが死んだり引退したりしている。
この『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ではそのネタがあっけらかんとバラされているので、いまだに『エンドゲーム』をスルーしているファンは、先にそちらを観てから鑑賞することをお勧めします。

そうしたほうが、スパイダーマン/ピーター・パーカー(トム・ホランド)とアイアンマン/トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)との絆や関係性がよりしっかりと理解できると思うから。
まあ、従来のアベンジャー・シリーズよりコメディ色や青春映画色が前面に打ち出されているので、どうしても『エンドゲーム』を観ておかなければならない、というほどのことはありませんが。

今回、ミッドランド高校の同級生たちとヨーロッパへ研修旅行(日本で言う修学旅行)に出かけたピーターは、何とか旅行中にMJ(ミシェル・ジョーンズ=ゼンデイヤ)と恋人同士になろうと知恵を絞っている。
前作ではあんなにリズ・トゥームス(ローラ・ハリアー)に夢中になっていたのに、彼女がオレゴンに越してしまった本作では、同じクラスのMJにのぼせ上がっているのだから節操がない。

ピーターがそのMJを口説こうとするたび、元S.H.I.E.L.D.(シールド)長官ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)に呼び出され、エレメンタルズという怪物たちと戦わなければならなくなる。
このデートと任務を両立させられずに右往左往、というシチュエーション・コメディの手法は前作と同様で、ピーターは自分がスパイダーマンであることを懸命にひた隠し、プラハでやっとMJをデートに誘い出す。

そうしたらMJにあっさりと「あんた、スパイダーマンでしょ? バレバレだよ」と言われるくだりがおかしくてたまらない。
ピーターがE.D.I.T.H(イーディス)という眼鏡型のAIを使いこなせず、クラスメートたちを窮地に陥れてしまう場面も大いに笑える。

新たな主要キャラクター、ミステリオ/クエンティン・ベック(ジェイク・ギレンホール)がストーリーの要所要所で意外な態度に出るアイデアも面白い。
前作に引き続いて監督を務めているジョン・ワッツは演出のテンポがよく、全体的にメリハリが効いていて、大人でも十分に楽しめる漫画映画に仕上げている。

幕切れ間際の〝予告編〟もよく出来ていて、早くも再リブート版第3作に期待させないではおかない。
ただ、次回作はぜひ、コロナ禍が終息したと、映画館の大スクリーンでIMAX-3D版を観たいものだ。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの採録

42『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年/米)A
41『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
40『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
39『下妻物語』(2004年/東宝)A
38『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
37『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
36『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
35『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
34『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
33『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
32『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
31『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
30『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
29『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
28『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
27『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
26『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
25『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
24『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
23『大脱出2』(2018年/中、米)D
22『大脱出』(2013年/米)B
21『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
20『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
19『グリーンブック』(2018年/米)A
18『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
17『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
16『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
15『海にかかる霧』(2014年/韓)A※
14『スノーピアサー』(2013年/韓、米、仏)A※

13『前科者』(1939年/米)
12『化石の森』(1936年/米)B
11『炎の人ゴッホ』(1956年/米)B※
10『チャンピオン』(1951年/米)B※

9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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