『ワンダー 君は太陽』(WOWOW)🤗

Wonder 
113分 2017年 アメリカ=ライオンズゲート
日本配給:キノフィルムズ 2018年

生まれつき変形した顔を持つ少年が5年生から普通の学校に入学し、様々なイジメに耐えながら、家族に支えられ、友だちをつくり、逞しく成長していく物語。
現実にはこうはいかない、という本作への批判があるのは承知の上で、やっぱり感動させられました、しんみりと。

オープニング、主人公のオギー(オーガスト)・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)が宇宙服のヘルメットをかぶって登場する、ほっこりした場面が絶妙のツカミになっており、ハートウォーミングなファミリードラマであるという本作の性格を強烈に印象づける。
出生児に顔が変形していたため、27回もの手術を受けたという経緯が、オギー自身のナレーションによって説明されるくだりもうまい。

母親の胎内でオギーの顔が変形したのは、トリーチャー・コリンズ症候群という遺伝子の疾患が原因だったが、これは映画の中程まで明らかにされず、それほど詳しくは語られない。
オギーの顔は重篤な病気によるものではなく、偶然起こった事故の結果のようなもので、身体や精神には何の影響も及ぼしていない、ということを、この映画は細かなセリフや場面を通して観客に納得させていく。

ストーリーは「オギー」「ヴィア」「ジャック・ウィル」「ミランダ」の4章立てになっており、小見出しのようにタイトルが出てはナレーターが交代する。
小見出しはすべて登場人物の名前で、主人公オギーのあとは姉のヴィア(イザベラ・ヴィドヴィッチ)、学校でオギーの友だちになりながらも仲違いしてしまうジャック・ウィル(ノア・ジュープ)、ヴィアの親友だったのに口も利かない仲になっているミランダ(ダニエル・ローズ・ラッセル)。

オギーは学校で「ゾンビ」「モンスター」などと呼ばれてイジメに遭うが、それをどのようにして克服していったのか、オギー本人だけでなく、周囲の子供たちの視点から語っているところがミソ。
障害を持って生まれたオギーが逆境を克服して誰からも認められる存在になっていく、というストレートな筋立てではなく、彼の周りにいる子供たちがオギーのどのようなところに惹かれ、彼を中心とした人間関係をどんなふうに見ていたか、という構成にしたことによって、映画全体に膨らみと説得力が出た。

オギーを演じるジェイコブ・トレンドレイは嫌味のない好演。
母親イザベル役のジュリア・ロバーツも意外なほどハマっており、とくに幕切れに近い卒業式の場面ではクローズアップで見事なお母さんの表情をして見せる。

ただし、オギーの顔は『エレファント・マン』(1980年)とは異なり、ある程度見慣れてくるとふつうの顔に近いようにも見えて、最初からそう印象付けられるようなメイクにしたのではないかと推察できる。
オギーはもともと意思が強く、愛嬌もあり、利発で勉強の成績も抜群と、顔以外は超優等生、という設定も御都合主義的と言えば言えなくもない。

実際、米本国では現実に存在するトリーチャー・コリンズ症候群の患者と家族から厳しい批判の声もあがったという。
と、題材が題材だけにツッコミどころもまことに多いのだが、こういう時代にステイホーム用ファミリー映画として観るにはうってつけである、とここではポジティヴに捉えておきたい。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの採録

39『下妻物語』(2004年/東宝)A
38『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
37『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
36『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
35『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
34『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
33『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
32『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
31『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
30『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
29『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
28『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
27『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
26『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
25『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
24『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
23『大脱出2』(2018年/中、米)D
22『大脱出』(2013年/米)B
21『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
20『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
19『グリーンブック』(2018年/米)A
18『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
17『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
16『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
15『海にかかる霧』(2014年/韓)A※
14『スノーピアサー』(2013年/韓、米、仏)A※

13『前科者』(1939年/米)
12『化石の森』(1936年/米)B
11『炎の人ゴッホ』(1956年/米)B※
10『チャンピオン』(1951年/米)B※

9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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