『バイス』(WOWOW)😉

役作りのために過激な増減量をすることで有名なクリスチャン・ベールが、ジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領ディック・チェイニーを演じた作品。
今回はベールがオファーを受けることが企画の大前提であり、ブラッド・ピットをはじめとする製作サイドはほかの役者で撮ることは頭から考えていなかったという。

そんな姿勢を意気に感じたのか、引き受けたベールは本作でもデブのチェイニーを演じるために20㎏の増量を敢行。
こうなると、実話モノとかチェイニーの伝記とかいう以前に、ベールの肉体改造&特殊メイクアップショーと言ったほうがいい。

そもそも、大統領ではなく副大統領をハリウッド製エンターテインメントの主人公に据えること自体、アイデアとしては地味で大冒険。
となると、例えば昔のネッド・ビーティや最近のポール・ウォルター・ハウザーみたいに実際のチェイニーと同じ体型をした役者を起用しても客は呼べない。

そこで製作陣としては、オスカー俳優のベールを担ぎ上げ、チェイニーの悪政ぶり、悪辣な人物像を徹底的にこき下ろし、嘲笑ってやろうと考えたのだろう。
というのは私の勝手な憶測ですが、恐らく実情からそれほどズレた見方ではないと勝手に思っています。

監督・脚本を手がけたアダム・マッケイはテレビ出身で、アメリカの大人気長寿コメディ番組『サタデーナイト・ライブ』のスケッチライター(コント作家)とディレクターを務めた人物。
あの番組を観たことのある人なら、本作がどういうセンスと方針で作られているか、ある程度察しがつくでしょう。

大量破壊兵器を隠し持っているという言いがかりをつけてイラクに攻め込み、有力メディアにガセネタをリークした情報操作をはじめ、チェイニーの政策や政治手法をこれでもかとばかりに批判。
その半面、名門イエール大学在学中に酒がらみのトラブルを起こして退学となり、のちに妻となった幼馴染みの才媛リン(エイミー・アダムス)に尻をたたかれ、ホワイトハウスで出世の階段を上がっていくチェイニーの半生が面白おかしく描かれる。

ブッシュ大統領のサム・ロックウェル、ドナルド・ラムズフェルド国防長官のジェームズ・カレル、コリン・パウエル統合参謀本部議長のタイラー・ペリーなど、誰も彼もホンモノにそっくりなのも大いに笑える。
次女メアリー(アリソン・ピル)が同性愛者で、これがチェイニーと長女リズ(リリー・レーブ)の政治活動に微妙な影を落としていたことは初めて知った。

ただし、そうしたディテールやあちこちに散りばめられたギャグは、日本人にはピンとこない部分も多く、アメリカ人かよほどのアメリカ通でなければ理解できないんじゃないかな。
それでも、大いに笑いながら、大変勉強になったことは確か。

オススメ度B。

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A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだ ったら😑
※ビデオソフト無し

17『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
16『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
15『グリーンブック』(2018年/米)A
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13『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
12『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
11『前科者』(1939年/米)C
10『化石の森』(1936年/米)B
9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A

スポーツライター。 最新刊は構成を担当した達川光男氏の著書『広島力』(講談社)。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』、WEDGE Infinity『赤坂英一の野球丸』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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