『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』(旧サイトより再録)

Star Wars: The Last Jedi 
152分 2017年 アメリカ=ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ

(2017年12月)18日月曜14時40分からの回をTOHOシネマズ新宿のIMAXへ見に行ったら、平日にもかかわらずほぼ満員。
通常のスクリーンなら週末でも当日券を買えるが、IMAXや4DMXはネットで予約が解禁される2日前の深夜12時に買っておかないとすぐに埋まってしまう(おれも12時になった途端、いつもの席を素早くポチッとやった)。

客席もおひとり様(おれ)、カップル、男女3~4人のグループ、外国人のカップルや友人同士など、国籍も職業も年齢層も実に様々で、さすがは〈スター・ウォーズ〉ならではの集客力。
シリーズ再開第1作(エピソード7)『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)公開直後のように、ストームトルーパーのマスクをかぶった団体さんはいなかったけどね。

その『フォースの覚醒』から2年、今回は前作よりもはるかに見応えのある作品に仕上がっている。
正直、2時間32分はやはり長過ぎるものの、『ブレードランナー2049』ほど冗長には感じられなかった。

主たる要因は、このシリーズ最大の売り物、特撮や戦闘場面のスケールや迫力もさりながら、新キャラクター同士の葛藤がしっかりと作り込まれているところにある。
1977年公開の第1作『エピソード4/新たなる希望』からオンタイムでシリーズ全作を見ているからか、前作ではレイ(デイジー・リドリー)やカイロ・レン(アダム・ドライバー)がいまひとつ〈スター・ウォーズ〉のキャラになりきれていないように感じていたのだが、今回は堂々と物語の前面に出てきて文字通り八面六臂の大活躍、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)やレイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)に勝るとも劣らぬ存在感を発揮している。

とくに、カイロ・レンがファースト・オーダーの最高指導者スノーク(アンディ・サーキス)に「そんなふざけたマスクを取れ! おまえは所詮ダース・ベイダーにはなれないのだ!」と一喝され、ベイダーそっくりのマスクを脱ぎ捨て、メチャクチャに壊してしまう場面がいい。
以後、素顔でファースト・オーダーの軍隊を率いるレンは、前作の〝ポスト・ベイダー〟という位置付けから完全に脱皮、心に闇と苦悩を抱えたまったく新しいキャラクターに生まれ変わることに成功した。

脇役の新キャラでは、元ストームトルーパーのフィン(ジョン・ボイエガ)の新たな恋人?ローズ・ティコ(ケリー・マリー・トラン)が異彩を放っている。
トランはベトナム人の両親を持つアメリカ出身の女優で、彼女をはじめアジア人の登場人物が増えているのは、中国資本がハリウッドに投資しているこの時代ならではの現象だろうか。

また、レジスタンス側の軍人に女性が増えていることも本作の大きな特長だろう。
とりわけ、負傷したレイア将軍に代わってレジスタンスの指揮を執るボルド提督(ローラ・ダーン)が、クライマックスで男も顔負けの特攻精神を発揮する場面が実にカッコイイ。

そのクライマックスは格闘技の興行で言えば「ダブル・メインイベント」。
レンがレイをスノークの前に引っ立てて行き、旧シリーズ(エピソード4~6)ならここでの大立ち回りで続きは次回、となるところをさらに引っ張り、レジスタンスが逃げ込んだ惑星でレンとスカイウォーカーが「伯父甥対決」を繰り広げる。

共感の持てる人間ドラマに加え、矢継ぎ早に見せ場を繰り出し、ラストシーンもこれまでとは一味違った幕切れ。
このシリーズをいまの時代にフィットした作品にリニューアルした監督・脚本ライアン・ジョンソンの功績は、『エピソード5/帝国の逆襲』を監督したアーヴィン・カーシュナーにも匹敵する。

採点は85点(オススメ度A)。  

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(*^o^*)  B=よかったら( ´▽`) C=気になったら(・・?)  D=ヒマだ ったら(。-_-。)
※ビデオソフト無し

124『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(2015年/米)B
123『殺人者』(1946年/米)C
122『地獄の英雄』(1951年/米)A
121『ペイルライダー』(1985年/米)A
120『刑事マディガン』(1968年/米)C
119『十二人の死にたい子どもたち』(2019年/ワーナー・ブラザース)C
118『マスカレード・ホテル』(2019年/東宝)A
117『コンフェッション』(1998年/米)B
116『隣人は静かに笑う』(1999年/米)A
115『ミスター・ガラス』(2019年/米)C
114『アリー スター誕生』(2018年/米)A
113『荒野のストレンジャー』(1973年/米)B
112『セルピコ』(1974年/米)A
111『レイジング・ブル』(1980年/米)A
110『ニセコイ』(2018年/東宝)D
109『来る』(2018年/東宝)B
108『獄門島』(1977年/東宝)C
107『悪魔の手毬唄』(1977年/東宝)C
106『犬神家の一族』(1976年/東宝)B
105『止められるか、俺たちを』(2018年/若松プロ、スコーレ)C
104『モリーズ・ゲーム』(2017年/米)A
103『ガタカ』(1997年/米)A
102『デューン 砂の惑星』(1984年/米)C
101『ファイヤーフォックス』(1982年/米)C
100『デス・ウィッシュ』(2018年/米)C
99『人魚の眠る家』(2018年/松竹)A
98『焼肉ドラゴン』(2018年/ファントム・フィルム)B
97『アニメ 大好きだったあなたへ ヒバクシャからの手紙』(2019年/NHK広島放送局)A※
96『ひろしま』(1953年/北星映画)B※
95『硫黄島からの手紙』(2006年/米)A
94『父親たちの星条旗』(2006年/米)A
93『さすらいの一匹狼』(1966年/伊、西)C
92『リンゴ・キッド』(1966年/伊)C
91『皆殺し無頼』(1966年/伊)C
90『バリー・シール アメリカをはめた男』(2017年/米)A
89『スマホを落としただけなのに』(2018年/東宝)C
88『アントマン&ワスプ』(2018年/米)A
87『アイアンマン』(2008年/米)A
86『ミクロの決死圏』(1966年/米)C
85『クレオパトラ』(1963年/米)C
84『瞳の中の訪問者』(1977年/東宝)D
83『HOUSE ハウス』(1977年/東宝)C
82『マザー!』(2017年/米)B
81『アリー・イン・ザ・ターミナル』(2018年/米、英、愛、洪、香)D
80『ヴェノム』(2018年/米)B
79『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(2018年/米)B
78『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(2015年/米)A
77『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(2011年/米)C
76『M:i:Ⅲ』(2006年/米)B
75『M:i-2』(2000年/米)C
74『ミッション:インポッシブル』(1996年/米)C
73『ダンテズ・ピーク』(1996年/米)C
72『スーパーマン4 最強の敵』(1987年/米)D
71『スーパーマンⅢ 電子の要塞』(1983年/米)C
70『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』(2006年/米)B
69『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980年/米)A
68『スーパーマン ディレクターズ・カット版』(1978年/米)A
68『MEG ザ・モンスター』(2018年/米)C
67『search/サーチ』(2018年/米)A
66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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