『スーパーマン4 最強の敵』(WOWWOW)

Superman IV: The Quest for Peace
93分 1987年 アメリカ=ワーナー・ブラザース 日本配給:松竹富士

WOWWOWの〈スーパーマン特集〉も、クリストファー・リーヴ版スーパーマン自体もこれでおしまい。
劇場公開時もテレビ放送時も評価は散々で、いまもまったく顧みられておらず、今回もスルーしてもよかったのだが、この機会を逃したら一生未見のままになるだろうから約1時間半ぐらいならガマンするか、と思って観ることにした。

前作『スーパーマンⅢ 電子の要塞』(1983年)に出てこなかった常連の悪役レックス・ルーサー(ジーン・ハックマン)が復活。
ニュークリアマン(核兵器人間)という「最強の敵」をスーパーマン(リーヴ)にぶつけるのだが、このキャラクターがあまりにもショボい。

当時フジテレビで放送されていたコメディー番組『オレたちひょうきん族』(1981〜1989年)のタケちゃんマンに出てきそうなコスチュームで、太陽光線を浴びていないと途端にガス欠を起こして動かなくなってしまう、という設定がまた情けない(どこが「最強」なんだよ、もう)。
しかも、演じるマーク・ピローは俳優ではなく、セリフがしゃべれないため、ハックマンが音声を変えて吹き替えているという(どこが…以下同文)。

なぜスーパーマンがこれほど安っぽい低予算映画に堕してしまったのか。
前作の失敗でやる気をなくしたプロデューサーのアレクサンダー&イリヤ・サルキンドが、イスラエル系のB級アクション専門プロダクション、キャノン・フィルムズに映画化権を売却したためだ。

一方、リーヴはこのころ、〝脱スーパーマン〟を目指し、しがない新聞記者を主人公としたサスペンス映画『NYストリート・スマート』(1987年、日本劇場未公開)の製作に着手していた。
この企画を様々なプロダクションに持ち込んだものの、どこからも色よい返事を得られない中、唯一キャノン・フィルムズだけが承諾してくれたという。

その契約の条件が、スーパーマンの続編をキャノンで製作させ、リーヴが主演することだったのだ。
しかし、予算も上映時間も大幅に削り、特撮もオプチカル合成からビデオ合成に質を落とした本作は大赤字を計上し、すでに経営状態が傾いていたキャノンは間もなく倒産に追い込まれた。

ちょっとだけ面白いのは、映画の中でクラーク・ケントとロイス・レイン(マーゴット・キダー)が勤める新聞社デイリー・プラネットも資金難に追い込まれ、新たな社主によってタブロイド紙にリニューアルさせられるくだり。
しかも、その社主デヴィッド・ウォーフィールドがサム・ワナメイカー、彼の娘で新編集長に就任するのがマリエル・ヘミングウェイと、低予算映画の割になかなか豪華な顔ぶれなのである。

ここだけは、タブロイドで何が悪い! ホントのことだっていっぱい書いてるんだぞ! 思わず内心で毒づいてしまいましたね。
日刊ゲンダイ出身の私としては。

オススメ度D。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し

71『スーパーマンⅢ 電子の要塞』(1983年/米)C
70『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』(2006年/米)B
69『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980年/米)A
68『スーパーマン ディレクターズ・カット版』(1978年/米)A
68『MEG ザ・モンスター』(2018年/米)C
67『search/サーチ』(2018年/米)A
66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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