『暴力金脈』(WOWOW)

『恐喝こそわが人生』(1968年)、『沖縄やくざ戦争』(1976年)と同様、WOWOWの1月の企画〈松方弘樹追悼特集〉で放送された1本。
 本作の鑑賞は2回目で、初見は赤羽に住んでいた30代のころ(1990年代)、TSUTAYAで借りたVHSだった。

 赤羽にはもう1店、個人経営のレンタルビデオ店があり、こちらには『悪魔くん』(1966~67年/NET)、『マイティジャック』(1968年/フジテレビ)、『怪奇大作戦』(1968~69年/TBS)と、私が5~6歳のころに放送されていた特撮テレビドラマのVHSが全巻そろっていた。
 当時住んでいたマンションがあったJR赤羽駅南口には昭和の空気が立ち込めた胡散臭げな店も多く、中国人同士の抗争によって死者が出るという事件も起こっている。

 そういう環境下で見たからか、この『暴力金脈』は昭和の生臭い匂いがプンプン漂ってくるようだった。
 松方弘樹演じる主人公は総会屋見習いの青年で、ベテランの〝もらい屋・万才屋〟小沢栄太郎の元に弟子入りし、企業からカネを引き出す手口のイロハを教わる。

 さらに、かつて集団就職の列車で知り合った同郷のやくざ・梅宮辰夫が、そんな松方をバックアップ。
 この総会屋としての駆け出しの時代、松方が〝猫獲り屋〟でシノギを得る描写が興味深い。

 遠景ながらも河原で猫をバラすところが映され、〝取引先〟の大衆食堂で梅宮がハンバーグをがっついていると、その耳元で松方が「そらニャンバーグや」とささやく。
 このあたりは、吹き出す前にウエッとなりそう。

 大阪で幅を利かせていた総会屋・田中邦衛を出し抜き、銀行から3000万円をせしめた松方は、意気揚々と東京に進出。
 関東の総会屋のドン・丹波哲郎に痛い目に遭わされながらも、狙いをつけた大企業の社長・若山富三郎を失脚させようと調査を続けていく中、若山の愛人・池玲子の意外な正体を知ることになる。

 脚本を書いた笠原和夫は小川薫に取材し、自らも総会屋見習いとして株主総会に出席、様々な修羅場を目の当たりにしたそうだが、あまりに生臭くてほとんど使えなかったという。
 また、最後は松方が大手銀行に潜む巨悪に立ち向かうはずだったが、東映から「銀行を悪者にするな」とストップがかかり、野上龍雄が女がらみの苦肉のオチを考案したそうだ。

 最後は「みんな茶番さ」と、それまで関西弁を使っていた松方が、何故か東京弁で吐き捨ててお終い。
 この幕切れは、思い通りのストーリーを書かせてもらえなかった笠原と野上の捨てゼリフのようにも聞こえる。

 オススメ度B。

(1975年 東映 91分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

48『資金源強奪』(1975年/東映)B
47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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