『パットン大戦車軍団』(NHK-BS)

Patton

 第二次世界大戦の北アフリカ戦役、バルジの戦いなどで名高いアメリカ陸軍軍人ジョージ・パットン大将の伝記映画。
 当時、アメリカではベトナム戦争が泥沼化し、反戦運動が盛り上がっていた最中に製作されただけに、パットンが大変批判的に描かれている。

 開巻、画面いっぱいに広がった星条旗の前にジョージ・C・スコット演じるパットンが登場。
 ノルマンディー作戦決行を控え、第3軍の兵士たちに大演説をぶつ場面からたちまち引き込まれる。

 本編はパットンが北アフリカで第2軍団司令官に着任するところからスタート。
 僚友のオマール・ブラッドレー大将(カール・マルデン)に威圧的な態度を取り、細かな規則違反を見咎めては部下を叱り飛ばし、その必要もないのに軍医にまでふだんからヘルメットをかぶれ、などと細かいことまで注意して回る。

 北アフリカではドイツ軍を駆逐して目覚ましい功績を挙げるが、続くイタリア戦役のシチリア島戦線では、パットンの傲慢、かつ過度に好戦的な性格が仇となった。
 野戦病院を視察と見舞いに訪れた際、砲弾神経症の若い兵士をつかまえ、「傷ひとつ負っていないのに入院しているとは何事か」と怒鳴りつけて殴打、「おまえのようなやつは銃殺にしてやる!」と自分の銃にまで手をかけた。

 この事件がアイゼンハワー大統領に知られ、スキャンダルとして報じられたことから、パットンは一時司令官を解任。
 ノルマンディー上陸作戦でも、ドイツ軍の目を逸らすため、屈辱的な囮役を務めさせられることになる。

 パットンはその後、バルジの戦いで前線に復帰したものの、「司令部の判断は間違っている。おれの作戦を採用しろ。そうすれば勝てる」などと無理難題を吹っかけるようになり、次第に米軍全体の厄介者となっていく。
 アカデミー主演男優賞の受賞を拒否したスコットの名演、フランシス・フォード・コッポラのわかりやすい脚本、フランクリン・J・シャフナーのクールな演出が光る戦争映画の佳作。

オススメ度B。

(1970年 アメリカ=20世紀FOX 170分)

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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