『小野田さんと、雪男を探した男~鈴木紀夫の冒険と死~』

 角幡唯介の処女作『雪男は向こうからやってきた』(2011年)に登場する冒険家・鈴木紀夫の生涯を描いたNHK-BSのドキュメンタリードラマ。
 1974年、戦後29年もの長い間、フィリピン・ルバング島のジャングルに潜伏していた小野田寛郎氏を帰国するよう説得した上、ヒマラヤの雪男探しに情熱を燃やした男の物語である。

 鈴木とはいかなる人物だったのか、角幡唯介の著書を読んだときから気になってならなかったので、この番組は放送されるやすぐに録画して食い入るように見た。
 小野田さんが実は終戦を知っていたこと(にもかかわらず約30人のフィリピン人を殺していたこと)、鈴木が結婚しながら生涯定職に就かず、奥さんとやっていた喫茶店も僅か1年で畳んでしまったことなど、興味深い事実が続出する。

 しかし、鈴木を青木崇高、小野田を塚本晋也が演じている再現ドラマの部分が長過ぎ、しかも演出過剰で、僕としてはかえって興味を削がれた。
 この再現ドラマが、山田真歩、崔洋一、もたいまさこなど、それなりに顔の売れている役者が出てくる〝豪華版〟で、演出にも虚構としての映像的飛躍が多い。

 そのぶん、結果的にドキュメンタリーとしての迫真性が薄れてしまっている。
 こういう手法を使い、これほどの役者をそろえるなら、最初から実話に基づくテレビドラマにすればよかった。

 面白いことは面白いけれど、こういう題材は「ドキュメンタリードラマ」などという曖昧な手法ではなく、ドキュメンタリーかドラマか、どちらかに絞り込んで作るべきでしょう。
 オススメ度B。

(初放送:2018年3月25日(日) 午後10時00分~ 90分)

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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