『沖縄やくざ戦争』(WOWOW)

 前項『恐喝こそわが人生』と同様、1月のWOWOW特集、昨年他界した松方弘樹の追悼企画として放送された1本。
 以前から興味のあった未見の作品で、ちょうどキャンプ取材のため、4年ぶりに沖縄に行く前だったこともあり、大変興味深く鑑賞した。

 舞台は1971年、本土復帰を翌年に控えた沖縄。
 本土・関西の大手暴力団に対抗すべく、地元のやくざたちが手を結んだ「沖縄連合琉盛会」は、ともに理事長を務める大城朝光(織本順吉)、国頭正剛(千葉真一)の2派が水面下で角突き合わせていた。

 千葉扮する国頭は沖縄空手の有段者で、パンチパーマにタンクトップ、夜でもレイバンのサングラスをかけ、内地のやくざを「大和のやつら」と呼んで目の敵にしている。
 モデルは実在した新城喜史という沖縄ヤクザだそうだが、ビジュアルもキャラクターも千葉自身が演じた『仁義なき戦い 広島死闘篇』(1973年)の大友勝利にそっくり。

 松方演じる中里英雄は、その国頭の兄弟分で、やはり実在した上原勇吉というやくざがモデル。
 中里は3年前、国頭の罪をかぶって刑務所に入ったのに、出所してみると国頭は中里の子分の面倒を見ておらず、子分たちから口々に窮状を訴えられる。

 最初のうちこそ辛抱していた中里だったが、傍若無人な国頭の性格に愛想を尽かし、子分を連れて国頭派を離脱。
 その中里の子分のひとり、具志川照邦(室田日出男)に自分のシマを荒らされていると知った国頭は激怒、具志川の睾丸をペンチで潰すという凄惨なリンチを加える(室田の表情が凄まじく、本当に痛そう!)。

 その後、中里の子分・嘉手刈宏(モデル:日島稔=渡瀬恒彦)は儀間二郎(尾藤イサオ)とともにキャバレーで飲んだくれていた国頭を襲撃。
 嘉手刈がS&W38口径の銃弾を打ち込み、国頭がのたうちまわって絶命するシークェンスは、この時代の東映実録路線屈指の名場面と言っていいだろう。

 しかし、こうして琉盛会の国頭派が壊滅してしまうと、中里と子分たちは琉盛会の中で孤立。
 背に腹は代えられず本土系関西暴力団、旭会系梅津組組長・梅津義明(梅宮辰夫)に泣きついたら、この男は裏側で大城派の実力者・翁長信康(成田三樹夫)とつながっていた。

 ここから先の展開は定石通りで、中里が沖縄の海で梅津と翁長を急襲するクライマックスも盛り上がりに乏しい。
 実録物ゆえの宿命なのか、エンディングも完全決着とはいかず、いかにも中途半端な幕切れに終わっている。

 本作は当初、笠原和夫が『沖縄神撃作戦』というタイトルで脚本化したが、現実の沖縄抗争の重要な関係者のひとりが沖縄で東映作品を配給している興行師でもあった(これだけでもスゴイ話)ことから、岡田茂社長がいったん映画化を断念。
 そのあとを受けて高田宏治が前半、神波史男が後半の脚本を書いたものの、製作当時はまだ第4次抗争が継続中だったために現地・沖縄でのロケが叶わず、国際通りの繁華街などはすべて京都の撮影所にセットを組んで再現したという。

 完成度自体は高いとは言えないが、70年代の熱気をヒシヒシと伝えてくる貴重な作品として評価したい。
 なお、つい先日行ってきた現在の国際通りからは本作のような雰囲気はすっかり失われ、中国・台湾・韓国の観光客が楽しそうに闊歩している。

 オススメ度B。

(1976年 東映 96分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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