『恐喝こそわが人生』(WOWOW)

 1月のWOWOW特集、昨年他界した松方弘樹の追悼企画として放送された1本。
 監督は深作欣二で、東映のドル箱コンビによるヤクザ映画だが、松竹で製作・配給されているのが珍しい。

 松方演じる主人公・村木はバーの掃除夫から身を起こし、新宿で一端の顔になった強請り屋。
 序盤の下積み時代、「ドブネズミ」と呼ばれて蔑まれ、和式の便所で這いつくばるようにして働いている姿を生々しく描いているところが深作演出ならでは。

 小銭稼ぎの恐喝でのし上がった村木は、信頼できる仲間を集めて独立愚連隊〈四ツ葉会〉を結成する。
 メンバーはムショ仲間の関(室田日出男)、女友達の紅一点・お時(佐藤友美)、ケンカ要員の元プロボクサー・ゼロ戦(城アキラ=のちのジョー山中)。

 村木はやがて、高利貸しとの間に交わされた念書をネタに、政界のフィクサー・奥中(丹波哲郎)を強請ろうと企てる。
 しかし、その過程でゼロ戦が殺され、これに脅えた関も四ツ葉会から離脱。

 かくて、村木はお時と身体を重ねた翌日、単身、奥中との〝対決〟に臨むことになる。
 クライマックスに至る直前、かつて村木が目にした排水に浮かんだドブネズミも死体が何度もカットインされる、というのも深作演出の真骨頂であり、この時代のギラギラ、ゴミゴミした世相や雰囲気を感じさせる。

 ラストは、当時の有楽町交差点に面した日劇ビルの前に奥中を呼び出そうとして失敗。
 殺し屋(川津祐介)に腹を刺され、衆人環視の中、鮮血にまみれて路上に斃れる、という凄絶な最期を遂げる。

 この派手なエンディングも深作演出ならでは、ではあるが、松竹でつくられているからか、どうも東映っぽくなくて、いまひとつ迫力が感じられない。
 何か別の松竹映画の終わり方に似てるんだよなあ、と思いながらこの一文を書いていて、あっ、そうだ、と思い当たったのが大島渚監督作品、松竹ヌーベルバーグの嚆矢となった『青春残酷物語』(1960年)だった。

 あの映画では、松方を刺した川津が、松方とよく似た殺され方をしておしまい、となる。
 1960年代の映画界は日米ともにバッドエンドが主流だったんだろうな。

 オススメ度B。

(1968年 松竹 89分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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