『モントリオール・エクスポズを殺したのは誰なのか』(Netflix)🤗😱

Who Killed the Montreal Expos?
91分 2025年 カナダ=Netflix

1969年にカナダで初のメジャーリーグ球団として設立されたが、経営基盤が脆弱だったことから、2004年に球団売却とワシントンへの移転を余儀なくされたエクスポズの物語。
草創期に活躍したペドロ・マルティネスやウォーレン・クロマティなど、日本でも馴染みの深いスター選手の懐かしいプレー映像から本作は始まる。

1994年にはナ・リーグ東地区の首位を走り、ワールド・シリーズ優勝も狙えると言われた絶頂期、労使協定の更新を巡って30球団のオーナー側とMLB選手会側が真っ向から対立。
この年のシーズン終了を待たずに選手会がストライキを決行し、エクスポズの初優勝も夢に終わったところから凋落は始まった。

このころから選手の年俸が著しく高騰し、アメリカ本国の伝統球団のような資金力を持ち合わせていなかったオーナーのクロード・ブローシュは四苦八苦。
そうした苦境の最中、選手にかかる人件費を抑えるため、ラリー・ウォーカーをはじめとする主力選手4人を一挙に放出してしまう。

これは今でも「MLB史上最悪のファイアーセール」と言われ、ショックを受けた地元ケベック州の観客は激減。
それならばとブローシュは新球場の建設をぶち上げ、ケベック州政府に資金の提供を持ちかけたが、財政難を理由に断られた上、自分がかき集めた共同オーナーの間でも内紛が発生し、つるし上げにあったあげく辞任に追い込まれた。

1999年、新たに球団買収に乗り出したジェフリー・ローリアがまたとんでもない悪徳オーナー。
僅か1800万ドルの資金でエクスポズの筆頭株主となりながら、2002年に球団株を1億2000万ドルでMLBに売り飛ばし、フロリダ・マーリンズの買収に走ったのだ。

かくしてエクスポズは、ワシントン移転が決まるまでの3年間、MLB管轄下の球団として下位に低迷せざるを得なかった。
このあたりは、1970年代、日本のライオンズが西武に買収されて福岡から埼玉に移転する前、球団名に太平洋クラブやクラウンライターのスポンサー名を付け、実際はパ・リーグによって運営されていた顛末を彷彿とさせる。

エンディングはワシントン移転から20年後、名将フェリペ・アルー、スター選手だったマルティネスやクロマティがモントリオールでファンとの交流イベントに出席し、往年を振り返って旧交を温める場面が続く。
生まれ育った街にプロ野球の球団があったという事実は、日本でもカナダでも、もちろんアメリカでも何物にも代えがたい歴史の一コマなのだろう。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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