新聞社新人研修の今昔🗞️

きょうの伝統の一戦は2連敗していた阪神が巨人に勝って一矢報いました

先月半ばからこの大型連休中まで、マスコミ各社では毎年恒例の新人研修が行われています。
僕がお世話になっている東スポでも、若くて初々しい新入社員のみなさんが先輩記者に引率され、東京ドームをはじめ、神宮、ハマスタ、ZOZOマリンなど、関東首都圏の球場を回っていました。

以前は、東スポの社員記者に新人を紹介されると、時にあれこれ質問を受け、つい話し込むこともあった。
そこで「頑張ってね」と言うついでに、こんなアドバイスをしていたものです。

「いずれは辞めたくなるようなことにぶつかるだろうけど、そこでもう一度よく考えて。
それを乗り越えれば、また新たなステージに進めるかもしれないから」

しかし、最近では考えを改め、もうこんな年寄りの外部ライターが余計なことを言わないほうがいいだろう、と思うようになりました。
61歳にもなると、いま22歳ぐらいの彼・彼女たちがどんな出来事を「辞めたくなるようなこと」と感じるか、なかなか想像がつかないので。

近年、全国的かつ全職種における新入社員の離職率は右肩上がりに高くなる一方で、今年はとくに入社早々に辞める傾向が顕著だと、ネットの記事やテレビの情報番組が伝えている。
本人に代わって退職の意向を伝える〝退職代行サービス業〟も、以前は「え、そんな会社があるの?」という印象だったのが、今ではしっかりと世間に認知されているらしい(個人的にはまだ違和感がありますが)。

ある大手全国紙の管理職によると、新人の早期退職者が増えているだけでなく、3〜4年経験を積んだところで辞めていく若手の記者も少なくないそうです。
在職中に取材のノウハウを身につけ、人脈を作ると、それを利用してもっと書きたいことを書こうと、ネットメディアに転職したり、もしくは自らネットメディアを立ち上げたりするんだとか。

へええ、今時の人はやることも考えることも違うんだねえ。
日刊現代に就職した1986年、自分の新人時代を振り返ると、研修からして今とはまるで違っていた。

当時の新聞はまだ旧式オフセット印刷にすらなっていない活版印刷。
僕が就職した日刊現代の新人研修では、毎朝の紙面作りから、輪転機の印刷、都内各駅のキヨスクへの配送まで、いかにして毎日の新聞が読者の元に届けられているか、数日間に渡って勉強させてもらった。

校閲部の人たちによる原稿の読み合わせ、印刷所(日刊スポーツ印刷)の人たちが一つ一つ活字を組んでいく職人技、さらにキヨスクのカゴに新聞を配置していく販売部員の手際の良さには、目からウロコが落ちる思いだった。
とくに、最後の配送の段階で両手に新聞の束を持たされ、営団地下鉄(現東京メトロ)茅場町駅の階段を降りていったときは、あまりの重さに右へヨロヨロ、左へグラグラと真っ直ぐ歩けない。

そこで、販売部員の方に「な、紙って重いだろ?」と言われたことは今でも忘れられません。
そして、「赤坂くんは一つでいいよ」と束の一つを僕から取り上げ、軽々と肩に担いで階段を降りていった。

販売部員の先輩は、俺たちがこんなにしんどい思いをして新聞を配ってるんだから、しっかりした記事を書けよ、と暗に教えてくれたわけで、今振り返ると、大変貴重な経験だった。
しかし、今時の新人にそういう研修をみっちりやらせたら、ますます離職率が高くなるかもな。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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