『父よ』ジョゼ・ジョヴァンニ😁😭😢🤔☺️😌

Il avait dans le cœur des jardins introuvables
白亜書房 翻訳:藤田和基 定価1900円=税別/古書のみ
第1刷:2002年7月1日 
原著発行:1995年

フランス暗黒街出身の作家、映画監督で、1960〜70年代のフィルムノワールの名匠として知られるジョゼ・ジョヴァンニ(1923〜2004年)が1995年に発表した最後の小説。
僕は高校時代にデビュー作『穴』(1958年)を読み、ジャック・ベッケル監督による1960年映画化作品も観て以来のファンなので、一言一句をじっくりと味わうように読んだ。

ジョヴァンニはサンテ刑務所から脱獄しようとした経験を元にした『穴』以降、小説『おとしまえをつけろ』、『墓場なき野郎ども』(ともに1958年)、映画『ラ・スクムーン』(1972年)、『ル・ジタン』(1976年)など、闇社会に生きる無法者を描いた作品で知られた。
独特の描写と演出が鋭い切れ味を感じさせる半面、ロベール・アンリコ監督の傑作『冒険者たち』(1967年)の原作小説と脚本のような郷愁とリリシズム(叙情性)に満ちた作風も忘れ難い。

遺作となった本作は、そうした一連の作品群とは一線を画した自伝的長編で、主人公はジョヴァンニの父ジョー。
コルシカ生まれのギャンブラーだったジョーがアメリカに渡り、2度の世界大戦と時代の荒波に翻弄されながら、手のつけられない悪ガキだったジョゼとどのように対峙し、愛情を注いでいたか、ジョヴァンニは父を時に冷たく突き放し、時に優しく抱き寄せるようにして描いていく。

博徒の世界でこそ肩で風を切って歩いていたジョーだが、家庭では妻リリーの尻に敷かれ、ジョゼと兄バレットが自分の財布から金を盗んでいるところを目にしても、叱り飛ばすこともできずに黙って見逃してしまう。
数々の罪を犯したジョヴァンニが殺人罪で死刑判決を受けたとき、ジョーは助命嘆願のために奔走するが、刑務所で肝心の息子と面会すると、いつも言いたいこと、伝えたいことを一言も口にできない。

ジョヴァンニもまた父親に対する根深い反発心から、鉄格子を挟んで向かい合っている間、心を固く閉ざしたままだった。
ところが、終盤の父の死後のくだりになると、ジョヴァンニはそれまでの「ジョー」という三人称をやめ、父を「あなた」と呼んで胸の内をさらけ出すように語りかける。

なぜ自分はあなたに優しい言葉をかけられなかったのか、生きているうちに聞いてほしいことがたくさんあったのにと、ジョヴァンニが父ジョーに向けた慟哭のごとき言葉の奔流は、すでに父親を亡くしている61歳の読者、私の胸を打たずにはおかなかった。
ジョヴァンニは2001年に本作を自ら映画化すると、これで思い残すことはないと思ったのか、3年後の2004年に80歳で亡くなっている。

😁😭😢🤔☺️😌

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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