「勝つことが僕にとっていま一番大事なこと」
野球ファンに限らず、大谷翔平がドジャースの入団会見で語った言葉を覚えている日本人は多いだろう。
よく通る声で、さらにこう強調していた。
「一番大事なのはやっぱり全員がその勝ちに、同じ方向を向いていること。
オーナー、フロント、チームメート、ファンのみなさんがそこに向かっていることが一番大事かなと思います」
この発言を聞いて、私は大谷と花巻東の同級生に取材した2014年のことを思い出した。
（拙稿『大谷翔平をめぐる物語 160㌔右腕と、夏の続きを。』Sports Graphic Number編・甲子園ベストセレクションⅠ『9人の怪物を巡る物語』／文藝春秋・所収）。
当時、大谷を中心に堅い結束力を誇った花巻東にも、チームがバラバラになった時期がある。
大谷が3年生で出場した12年春のセンバツの初戦で、藤浪晋太郎を擁する大阪桐蔭に2-9と惨敗。
大谷は1本塁打を含む被安打7、11四死球と散々な結果に終わった。
藤浪から1本塁打して一矢報いたのは大谷らしかったが。
主将だった大沢永貴によれば、「部員のみんなが受けたショックはものすごく大きかった」という。
「練習しようと集まっても気持ちが入らない。こんなんじゃやっても無駄だと途中でやめてしまったり、しばらくは本当にバラバラになっていた」そうだ。
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