『FALL フォール』(WOWOW)😉

Fall
107分 2022年 アメリカ=ライオンズゲート
日本公開:2023年2月 配給:クロックワークス

自分は高い所が怖いくせに、こういう〝高所恐怖症映画〟がテレビで放送されると、怖いもの見たさの好奇心が頭をもたげ、つい録画して観てしまう。
ただ、今回は主人公がロッククライマーだというので、この分野には『フリーソロ』(2018年)というドキュメンタリーの名作があるから、大して怖くないだろう、とタカをくくっていた。

ところが、これ、高い所に登る怖さではなく、登った所から降りられなくなる怖さを描いた映画なのである。
しかも、男性ではなく女性がふたり、山の頂上ではなくボロボロの鉄塔の天辺に取り残される、という設定がまた意表を突いていて、観ているうちにどんどん引き込まれた。

主人公はロック・クライミングの最中、愛する夫ダン(メイソン・グッディング)を失って以来、酒浸りになっているベッキー(グレイス・キャロライン・カリー)。
クライマー仲間で親友のハンター(ヴァージニア・ガードナー)は、そんなベッキーを見かねて、元気づけるために新たなクライミングに誘う。

ハンターはクライミングにかかる費用や世界各国を回る旅費を稼ぐため、「デンジャーD」というハンドルネームでYouTuberをしており、フォロワーは6万人以上。
そのYouTubeへ動画をアップする目的もあって、人里離れた砂漠にポツンと立つ、地上600メートルの老朽化したテレビ塔へ登ろう、とベッキーを誘ったのだ。

錆びつき、ネジの緩んだ梯子をハンターが先に登り、ベッキーも怖気づきながら天辺の狭い足場に登り詰める。
ベッキーはそこからダンの遺灰を眼下に撒き、ハンターはドローンを飛ばして動画をアップし、さあ、降りようとした矢先、突然梯子が崩壊して、ふたりは足場に取り残されてしまう。

アイデア賞ものの脚本を書き上げ、監督、製作も務めているスコット・マンは、もともと男性が主役のアクション映画が専門だという。
しかし、本作では女性を主人公にすることで、愛憎のドラマ、独特のスリルとサスペンスを醸成することに成功している。

オススメ度B。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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