『人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊』(日本映画専門チャンネル)😉

104分 モノクロ 東映 1968年

毎年この時期になると、CS放送の有料映画チャンネルではこぞって戦争映画特集を組む。
というわけで、PICKUPでも何本か、第2次世界大戦、太平洋戦争を描いた作品を取り上げます。

本作は、毎年のように日本映画専門チャンネルで放送されている東映作品で、人間魚雷・回天を題材としているところが異色の1本。
前年に戦記もの定番の特攻隊を描いた『あゝ同期の桜』(1967年)が東映経営陣の懸念を覆して大ヒット、その姉妹篇として企画された作品だと、当時のキャッチコピーにも謳われている。
 
鶴田浩二が回天を発案する大里史郎大尉を演じ、梅宮辰夫の吉岡圭治少尉とともに設計、開発に取り組みながら、志半ばにして演習中に事故死。
松方弘樹(三島節哉少尉役)、伊丹十三(潮田克己少尉役)ら予備士官が鶴田らの遺志を受け継ぎ、回天に乗り込んで米海軍の戦艦に突撃してゆく。

展開として弱いのは、鶴田、梅宮が死ぬ場面が具体的に描かれず、沈没した回天が引き揚げられたのち、きれいな遺体として出てくるだけにとどまっているところ。
これが当時の〝スター至上システム〟の限界だったのかもしれませんね。

劇場公開時にはこれでも説得力があったんだろうけど、松方、伊丹が自ら回天に乗り込む心理状態ともども、現代では説明不足に終わっていると言わざるを得ません。
ただし、特攻隊に比べ、いまや滅多に振り返られなくなった「人間魚雷・回天」を真正面から描いた作品として、邦画史に貴重な足跡を残した映画であることも確かです。

オススメ度B。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

旧サイト:2015年08月13日(木)Pick-up記事を再録、修正

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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