さようなら、お父さんのピアノ🎹

父親が愛用していたカワイのアップライトピアノK-18

今回の帰省中の重要な仕事のひとつが、父親の愛用していたピアノの売却だった。
カワイが2003年から発売を始めたK-18というアップライトピアノで、当時は高さ113㎝とコンパクトなサイズと、定価39万5000円(税別)というリーズナブルな価格がセールスポイント。

当時68歳だった父親は、老後の趣味とボケ防止にちょうどいいからと、早速このピアノを購入し、カワイのピアノ教室にも入会。
一時は教室の発表会で演奏するなど、随分張り切って練習に勤しんでいたものです。

しかし、その持ち主がいなくなってしまうと、僕も母親もピアノを弾かないから、内部の弦が劣化していくばかり。
このまま応接間に置いておいたら、いずれは処分するのに困るようになるので、その前に中古ピアノ買取業者に売却することにした。

そこで、ネットの【かんたんピアノ買取.com】で複数の業者に査定を依頼したところ、評価額もピンキリで、あまりにも大きな差があることに仰天。
以下、安い順に、金額、条件、買取業者の住所を書いておきます。

①1万6000円 運送費は含めず 千葉県野田市
②3万5000円 1階から通常作業で搬送可能 大阪府堺市
③6万円 外階段6段未満、3tトラック進入可能 静岡県浜松市
④7万円 1階平坦地、外階段5段以内の場合 埼玉県越谷市
⑤12万円 一戸建て1階からの通常作業 岡山県岡山市

どうしてこんなに差が出るのかというと、搬出する際の手間と輸送にかかる距離と運賃に関係があるらしい。
実際、①の業者の7.5倍の値をつけた⑤のビヨンドピアノセンターは広島県のお隣の岡山県で、買取日に指定したきょうは、同社が提携している広島県福山市の会社シャルダン商会が買取にやってきた。

ちなみに、僕の実家がある竹原市とシャルダン商会の本社がある福山市の距離は車で約30分程度。
最も近いところから買取に来られる業者が最高値をつけてくれたわけです。

ただし、いざ現物を引き渡す段になって、買取価格が減額される可能性があるのはどの業者も同様。
水、湿気、虫害、動物被害等による破損が認められ、買取不能で処分せざるを得ない場合はその費用を申し受ける(つまり逆にお金を要求する)とメールに明記している業者が少なくない。

詳しくは知らないが、中古ピアノの世界ではこういう買取現場での検品、減額、処分にまつわるトラブルが多いのだろう。
ご丁寧に、処分が必要と判断されたらその場でキャンセルしても構わない、その場合でもキャンセル料は発生しない、とメールに断り書きを入れているケースもありました。

果たして、父親のピアノは大丈夫か。
ソワソワしながらシャルダン商会の到着を待っていると、定刻の朝11時より20分早く、クレーンを備え付けたトラックが実家の前にやってきた。

トラックの運転席の上にクレーンが
ピアノに専用のベルトを付けて搬出開始
昇降台に乗せてトラックの中へ

しかし、懸念されたようなトラブルは何もなく、搬出作業は約1時間で完了。
見積もり通りの12万円を現金で受け取り、無事父親のピアノを送り出すことができた。

今度はどんな弾き手の元に渡るのか。
トラックを見送り、ピアノがなくなった応接間を見渡すと、ほんの少しだけ、昨年父親を亡くしたころの喪失感が胸に蘇りました。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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