『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』😉

Everything Everywhere All at Once
139分 2022年 アメリカ=A24
日本公開:2023年 配給:ギャガ
@TOHOシネマズ池袋:スクリーン3 3月17日14:50〜

今年の第95回アカデミー賞授賞式で作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優・女優賞、脚本賞、編集賞と、主要部門で7冠を達成した話題作。
にもかかわらず、日本の映画サイトのレビュー平均点は、Yahoo!が2.9、映画.comが3.2(3月17日現在)と決して芳しくはない。

都内の映画館の観客動員も、〝オスカー効果〟が期待された今週、意外なほど伸びていないようで、現に僕が17日に観に行ったTOHOシネマズ池袋、14時50分からの回も半分程度の入りだった。
世界的には、というよりアメリカでは、中国人が主要キャラクターを占めたアジア系作品として大変高く評価されているものの、アカデミー作品賞をはじめ4冠に輝いた韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)と比べると、日本のファンの支持率はいまひとつ、と言わざるを得ない。

もちろん、映画自体は非常によくできている。
マルチバースの大胆な設定に驚かされ、矢継ぎ早に繰り出されるアクションシーンに目を奪われ、お下劣な笑わせどころにも腹を抱えさせられ、最後はしっかり感動させられ、泣かされる。

それなのに、『パラサイト』ほど日本のファンにウケていないのは何故なのか。
以下、ネタバレにならない程度に自分なりの感想を書いておきます。

主人公はコインランドリー兼クリーニング店の経営に四苦八苦している中国人女性エヴリン・ワン・クワン(ミシェル・ヨー=アカデミー主演女優賞)。
序盤30分ぐらいはエヴリンを中心に、娘ジョイ(ステファニー・スー=同助演女優賞ノミネート)、ジョイの同性の恋人ベッキー・スリガー(タリー・メデル)、認知症の父ゴンゴン(ジェームズ・ホン)、そして秘かに離婚を考えている夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン=同助演男優賞)の人物像と葛藤がリアルで生々しく描かれる。

ところが、エヴリンが事業拡張の許可を得るため、税務申告に出向いた国税庁でエレベーターに乗った途端、同行した夫ウェイモンドの態度がガラリと変わる。
自分の正体はこのユニバースのウェイモンドではなく、別のユニバースからやってきた別のウェイモンドだ、そこでは悪の象徴ジョブ・トゥパキがすべてのユニバースを滅ぼそうとしている、トゥパキをやっつけられるのはエヴリンだけだ、どうか力を貸してくれ、というのだ。

思ってもみなかった夫の言葉にエヴリンが戸惑っていると、国税庁の監察官ディアドラ・ボーベアドラ(ジェイミー・リー・カーティス=アカデミー助演女優賞)がカラオケの領収書にマジックでグルグルと丸印を書き、「なんでコインランドリーにカラオケが必要なの?」と問い詰める場面が笑える。
このように、現実的な生活感たっぷりの描写の中に、徐々にSF&ファンタジーのテイストを交えていくセンスとタイミングが絶妙で、このあたりでハマる人はハマるでしょうね。

エヴリンはしょっちゅう行ったり来たり(映画中で「バース・ジャンプ」と呼ばれる)する10種類以上のユニバースで、コインランドリー経営者をはじめ、歌手、カンフー、シェフ、囚人などなど、様々なキャラクターに変身。
ディアドラや周囲の登場人物も含めて、バース・ジャンプをするには、とんでもなくバカなことを言ったり、お下劣な振る舞いをする必要がある、という設定が大いに笑わせる。

しかし、マルチバースの概念に対する馴染みが薄い日本人の場合、こんなに目まぐるし過ぎる展開にはついていけない、あるいは微妙な距離感を感じてしまう、という向きも少なくないでしょう。
また、こういうジェットコースター・ムービーは、いったん途中で乗り損ねると、置いてきぼりにされたような印象が先に立ち、どうにかこうにか観終わったころには疲労感が残るもの。

僕はどうだったかと聞かれたら、「面白かった!」が8割、「でもちょっとくたびれたかな…」が2割。
これから観る人には、「期待し過ぎなければ結構楽しめるよ」と言ってあげたいですね。

ところで、映画の出来栄えとは別に、妙に新鮮に感じたのが、スクリーンへの出入口からコロナ対策用の検温器がなくなったこと。
客席でもマスク着用の義務がなくなり、近くの席にお客さんがいなかったので、僕も久しぶりにマスクをはずして鑑賞しました。

これは解放感があったなぁ。
観終わったあとでまたマスクをつけるのを忘れそうになっちゃった。

オススメ度B。

A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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