野球はやっぱりベンチやグラウンドで取材したい⚾️

朝8時半過ぎ、打撃ケージを設営する全府中野球倶楽部の選手たち(左端が香坂コーチ)

きょうはクラブチームの名門・全府中野球倶楽部の取材で、JR東日本野球部の柏グラウンドまで行ってきました。
朝7時、スカイツリーライン曳舟駅の前で香坂英典コーチの愛車にピックアップしていただき、8時半前に柏に到着。

JR東日本は毎年のように都市対抗に出場している社会人野球の強豪だけに、初めて訪ねた柏の施設も実に立派。
両翼100メートル、中堅122メートルのメイングラウンドに加え、一塁側にブルペン、三塁側には巨大な室内練習場と、一部のプロ球団をしのぐほどと言っても過言ではありません。

午前中はフリー打撃をみっちりと

マネージャーの前田勉さんによると、全府中は試合でこの柏球場を訪ねたことはあるものの、練習だけのために借りたのは今回が初めてだったそうです。
そんなせっかくの数少ない機会だからでもあってか、朝9時に始まった練習量もかなりのもの。

午前中は前田マネジャー曰く「死ぬほど」フリー打撃に費やし、午後からはバントシフトやランダウンプレーなど、香坂コーチの言う「組織プレー」の反復練習。
声を嗄らして指導する香坂コーチに対し、選手たちも大声で質問をぶつけて、独特の熱気がグラウンドに漂った。

バントシフトの練習
練習後の反省会(右端が香坂コーチ)

午後2時過ぎからのラストメニューは実戦形式の練習。
全部で20人ちょっとと人数が足りないため、本格的な紅白戦ができなかったのは残念でしたが、それでも選手も指導者も、1球1球を疎かにしないよう、懸命に取り組んでいる姿が印象的でした。

実戦形式の練習では観客のいないグラウンドに選手の声が響き渡った

一連の画像をご覧になればおわかりのように、きょうの取材はすべて、ベンチやグラウンドレベルで行いました。
これが楽しかった、という以上に、ある意味、夢中になった。

コロナ前、プロ野球の取材では当たり前のように僕たち記者がベンチに出入りして、選手、監督、コーチと雑談をしながらネタを拾い、原稿を作るとともに、取材対象の彼らと人間臭い関係を築くことができた。
コロナ後、そういう環境が完全に失われた今、ごく普通にベンチやグラウンドにいることもできるクラブチームの練習は、野球取材の原点は何たるか、ということを思い起こさせてくれたのです。

ランダウンプレー練習後の反省会(上から4番目の画像)をスマホで撮影していた最中には、三塁側ブルペンで捕手が捕れなかったボールが転がってきて、僕の左足踵近くを直撃。
こんなことは、まだプロ野球取材の素人同然だった1989年2月、巨人のグアムキャンプでペッパーが行われていた最中、やはり選手が捕り損ねたボールが同じ踵近辺にぶつかって以来だった。

そんなふうに、記者が自由に取材できる半面、うっかりしていたらケガをしかねない危険をはらんでいるのが、かつての、本来の野球取材の現場だったんですよ。
プロ野球でそういう取材環境が失われ、しばらくは復活しそうにない中で、きょうの全府中野球倶楽部の練習は、野球を取材する喜びを改めて教えてくれました。

香坂コーチ、前田マネージャー、吉野直樹監督をはじめ、ご協力いただいたみなさんには、感謝、感謝です。
仕事で原稿を書くのはもう少し先になるので、今後ともよろしくお願いします。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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