『夢を生きた男 ザ・ベーブ』(NHK-BSP)😉

The Babe
115分 1992年 アメリカ=ユニバーサル・ピクチャーズ 日本配給:UIP

メジャーリーグで1シーズン2桁本塁打&2桁勝利の偉業を達成した大谷翔平より104年前、この記録を初めて打ち立てた〝元祖二刀流〟ベーブ・ルースの伝記映画。
『夢を生きた男』という邦題が付けられているからいささか甘ったるい作品かと思ったら、現役時代の素行の悪さをこれでもかとばかりに細かく描いている。

オープニングはあまりの悪ガキぶりに手を焼いた実の父親が、7歳のルースの手を引いてセント・メアリー工業少年院へ入所させるシーン。
ルースは食いしん坊の肥満児で、6歳でタバコ、7歳で飲酒を覚えたと言われ、母親とは死別しており、少年院で別れた父親とは生涯再会することはなかった。

少年院での運動の時間、野球好きのマティアス修道士(ジェームズ・クロムウェル)の投げる球を次々に塀の向こうへかっ飛ばし、野球の才能を発揮。
12年後に19歳になったルース(ジョン・グッドマン)は、ボルティモア・オリオールズのスカウトが後見人になると申し出たおかげで少年院からの出所を果たす。

やがて、ボストン・レッドソックスの主力選手として一躍スターとなるが、幼少期からの暴飲暴食やヤンチャな振る舞いは一向に治らず。
オーナーのハリー・フラジー(ピーター・ドゥナット)に身だしなみや言葉遣いに気をつけろと周囲されても、セレブの集まるパーティーで放屁したり、レストランでウェイトレスを「いいケツしてるな」と冷やかしたり。

最初の妻ヘレン(トリニ・アルバラード)を口説くときも、しょっちゅう彼女の名前を「エラ」「エスター」などと一夜限りの関係を持った女と間違える。
郊外で農場を経営したいというヘレンの夢を叶え、管理人付きの農場をプレゼントして結婚に漕ぎ着けたものの、すぐに退屈な農場生活に飽きてしまい、ダウンタウンのバーで16歳の女性ファンを口説いたことが新聞沙汰に。

レッドソックス時代にはルースが投手として登板する場面もあり、デトロイト・タイガースのタイ・カッブ(ランディ・スタインマイヤー)を空振り三振に仕留めている。
そんなルースに対して、ファンやジャーナリストから「ベーブは打者に専念するべきだ」という声が寄せられ、ホームラン打者として本格的に歩み始める、というくだりが、大谷翔平の大活躍を知っている今観るとなかなか興味深い。

1926年のワールドシリーズの最中、ルースが病身の10歳の少年ジョニー・シルヴェスター(ディラン・デイ)を見舞い、サインボールを渡してホームランを打つと約束し、実際に打って見せる伝説の逸話ももちろん描かれている。
ジョン・グッドウィンは大増量しての熱演で、懸命にルースに似せようとしている努力は十分に伝わってくるが、リアリティが感じられるかどうかは観る人によるでしょうね。

ちなみに、アメリカ本国での劇場公開当時は暴露的なネタが多いことから批評家に批判され、興行的にも失敗に終わったらしい。
とはいえ、監督が往年の娯楽映画職人アーサー・ヒラーだけに、評伝としてもエンターテインメントとしても合格点に達しており、ベーブ・ルースを名前しか知らない今時の野球ファンには一見の価値ある作品と言っていい。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2022リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

85『わたしは金正男を殺してない』(2020年/米)A
84『リスタート』(2021年/吉本興業、ハピネットファントム・スタジオ)B
83『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021年/米)C
82『ウルトラマン』第30話「まぼろしの雪山」ハイビジョンリマスター版(1967年/TBS、NHK)B
81『ウルトラマン』第1話「ウルトラ作戦第一号」ハイビジョンリマスター版(1967年/TBS、NHK)B
80『顔』(1957年/松竹)C
79『砂の器』(1974年/松竹)B
78『オールド』(2021年/米)B
77『マスカレード・ナイト』(2021年/東宝)B
76『そして、バトンは渡された』(2021年/ワーナー・ブラザース)B
75『スーパーマン&ロイス』シーズン1(15)「クリプトン最後の息子たち」(2021年/米)B
74『スーパーマン&ロイス』シーズン1(14)「エラディケーター」(2021年/米)B
73『スーパーマン&ロイス』シーズン1(13)「非常手段」(2021年/米)B
72『眼の壁』(2022年/WOWOW)B
71『白蛇小町』(1958年/大映)B
70『妖怪大戦争』(2005年/松竹)C
69『妖怪大戦争』(1968年/大映)B
68『妖怪百物語』(1968年/大映)B
67『レミニセンス』(2021年/米)C
66『張込み』(1958年/松竹)B
65『トップガン』(1986年/米)B
64『ゼロの焦点』(1961年/松竹)C
63『ザ・商社』(1980年/NHK)B
62『黒い画集 あるサラリーマンの証言』(1960年/東宝)B
61『地球の静止する日』(1951年/米)C
60『ウエストワールド』(1973年 /米)B
59『スーパーマン&ロイス』シーズン1(12)「たとえ死の谷を歩むとも」(2021年/米)B
58『スーパーマン&ロイス』シーズン1(11)「つかの間の追憶」(2021年/米)A
57『天使と悪魔』(2009年/米)A
56『キングコングの逆襲』(1967年/東宝)B
55『キング・コング』(1933年 /米)A
54『スーパーマン&ロイス』シーズン1(10)「母との再会」(2021年/米)A
53『スーパーマン&ロイス』シーズン1(9)「忠実なサブジェクト」(2021年/米)A
52『TOKYO VICE』#8剣ヶ峰(2022年/WOWOW、HBO Max)C
51『TOKYO VICE』#7不義不徳(2022年/WOWOW、HBO Max)B
50『ライトハウス』(2019年/米)C
49『TOKYO VICE』#6虚々実々(2022年/WOWOW、HBO Max)B
48『TOKYO VICE』#5因果応報(2022年/WOWOW、HBO Max)B
47『スーパーマン&ロイス』シーズン1(8)「無力な自分」(2021年/米)B
46『スーパーマン&ロイス』シーズン1(7)「鋼鉄の男」(2021年/米)B
45『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年/米)A
44『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(2018年/米)B
43『クワイエット・プレイス』(2018年/米)A
42『TOKYO VICE』#4虎穴虎子(2022年/WOWOW、HBO Max)B
41『TOKYO VICE』#3精神一到(2022年/WOWOW、HBO Max)C
40『ドニー・ダーコ』(2001年/米)B
39『スーパーマン&ロイス』シーズン1(6)「パワーの代償」(2021年/米)B
38『スーパーマン&ロイス』シーズン1(5)「スモールビルの良心」(2021年/米)B
37『TOKYO VICE』#2起死回生(2022年/WOWOW、HBO Max)B
36『TOKYO VICE』#1新聞記者(2022年/WOWOW、HBO Max)B
35『ふたりのウルトラマン』(2022年/NHK)A
34『スーパーマン&ロイス』シーズン1(4)「波乱の幕開け」(2021年/米)B
33『スーパーマン&ロイス』シーズン1(3)「人気者であることの特権」(2021年/米)B
32『カムバック・トゥ・ハリウッド‼︎』(2020年/米)B
31『すばらしき世界』(2021年/ワーナー・ブラザース)A
30『私は確信する』(2018年/仏、白)C
29『透明人間』(2020年/米)A
28『アナザーラウンド』(2020年/丁、蘭、瑞)A
27『スーパーマン&ロイス』シーズン1(2)「引き継いだもの」(2021年/米)A
26『スーパーマン&ロイス』シーズン1(1)「パワーの目覚め」(2021年/米)A
25『日本女侠伝 侠客芸者』(1969年/東映)A
24『昭和残俠伝 血染の唐獅子』(1967年/東映)B
23『大コメ騒動』(2021年/ラビットハウス)C
22『王の願い ハングルの始まり』(2019年/韓)A
21『フラッシュ・ゴードン』(1980年/米)B
20『タイムマシン』(2002年/米)C
19『アンダーウォーター』(2020年/米)C
18『グリーンランド−地球最後の2日間−』(2020年/米)B
17『潔白』(2020年/韓)B
16『ズーム/見えない参加者』(2020年/英)C
15『アオラレ』(2020年/米)B
14『21ブリッジ』(2019年/米)B
13『ムニュランガボ』(2007年/盧、米)C
12『ミナリ』(2020年/米)A
11『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(2021年/東宝映像事業部)C
10『死霊の罠』(1988年/ジョイパックフィルム)C
9『劇場版 奥様は、取扱注意』(2021年/東宝)C
8『VHSテープを巻き戻せ!』(2013年/米)A
7『キャノンフィルムズ爆走風雲録』(2014年/以)B
6『ある人質 生還までの398日』(2019年/丁、瑞、諾)A
5『1917 命をかけた伝令』(2020年/英、米)A
4『最後の決闘裁判』(2021年/英、米)B
3『そして誰もいなくなった』(2015年/英)A
2『食われる家族』(2020年/韓)C
1『藁にもすがる獣たち』(2020年/韓)B

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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