昨年指名漏れの社会人ナンバーワン投手は今年こそドラフトにかかるか⚾️

東芝・吉村は初回の立ち上がりから150㎞を連発

都市対抗5日目、取材に足を運んで3日目のきょう一番の興味は、第3試合・東芝-北海道ガスに登場した社会人ナンバーワン投手と言われる東芝・吉村貢司郞(24)のピッチングにあった。
183㎝、80㎏と恵まれた体格から繰り出す150㎞台のストレート、キレのあるスライダーやフォークで、國學院大時代からプロに注目されていた素材。

都市対抗のような大会に出てくるアマの選手がプロからどれだけ注目されているかは、ネット裏のスタンドに詰めかけたスカウトの顔ぶれと人数を見れば、大体わかる。
この時期は全国各地で高校野球の地区予選が行われていることもあり、スカウトはそちらを回るのに忙しく、即戦力が出てこない社会人の試合には見向きもしない。

実際、きょうも第2試合まではあまりスカウトの姿を見かけなかった。
が、吉村の出てくる第3試合の前になると、来るわ来るわ、ヤクルト・小川GM、ロッテ・榎スカウト部長、中日・松永スカウト部長、巨人・織田スカウトなどなど、各球団のベテランスカウトが続々と集結。

久しぶりに会った榎さんに声をかけると、彼も高校野球の地区予選を見てから東京ドームへ回ってきたそうで、真っ黒に日焼けしていた。
視察の目的はやはり吉村ですかと尋ねると、「去年は結構よくて、ドラフトにかかる年だったんだけど、今年はどうかなと思いましてね」と言う。

実は、吉村は大学を出た2019年、東芝2年目の昨年と、これまでに2度、プロ志望届を出しながら、ドラフトで〝指名漏れ〟。
きょうも各球団の錚々たる顔ぶれが視察に来ているほどだから、十分な素質の持ち主なのは間違いないが、なぜかどこにも指名されなかった。

昨年と今年の都市対抗での投球を見た限り、真っ直ぐに力があり、一通りの球種を投げられ、全体的にバランスの取れた好投手だと思う。
それでも12球団に指名を見送られたのは、プロで投げるにはまだ何かが足りないと見られたからだろうか。

吉村は今大会の開幕前、目標はあくまでも優勝と前置きしながら、「プロはいまでもひとつの夢」と改めてプロ志望を表明していた。
自分にとってもチームにとっても大事だった今夜の初戦、結果は6回93球を投げて、5安打1失点で負け投手に。

最少失点で抑えているのだから先発投手としての責任は果たしたとはいえ、過去負け無しの北海道ガスに〝ジャイアント・キリング〟を許すという非常に悔しい敗北となった。
この屈辱を糧にして、今後の公式戦で結果を出し、今年こそドラフトで指名されるか、吉村の野球人生の正念場である。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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