『トップガン マーヴェリック』2回目😊

Top Gun: Maverick
131分 アメリカ=パラマウント・ピクチャーズ 日本配給:東和ピクチャーズ
@TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン8(MX4D) 16:35〜

この映画の出来栄えについての感想文は6月29日付PIUKUPに書いた通りで、大きく変わってはいない。
よくできるているし、観ている間は何も考えずに楽しめるし、クライマックスでは無茶苦茶興奮もする半面、こんなことあり得ねーだろ、御都合主義にも程があるぞ、結局はトム・クルーズがエエカッコしたいだけの映画じゃないか、などなど、ツッコミどころが満載なのも確か。

にもかかわらず、最近の僕にしては珍しく、いつ頃のどういう映画以来か思い出せないほど久々に劇場公開期間中にリピートする気になったのは、面白さや完成度とは別の理由がある。
それは、この映画が実は『PLAN75』と同じくらい、年齢を意識させ、老いとともにどのように生きていくかを考えさせる作品だからだ。

本作の撮影中、マーヴェリックを演じるトム・クルーズは59歳だった。
それだけトシを取っても昇格を拒み、退役もせず、一介の大佐として飛び続けているマーヴェリックは、36年前の前作『トップガン』(1986年)のライバル、いまや米海軍大将となったアイスマン(ヴァル・キルマー)に、教官としてトップガンに戻るよう指令を受ける。

マーヴェリックが指導するパイロットの中には、かつてのマーヴェリックの同僚で、演習中に事故死してしまったグース(アンソニー・エドワーズ)の息子ルースター(マイルズ・テラー)がいた。
ルースターは父とマーヴェリックの間柄や事故の実情を知らないため、マーヴェリックに対して心を閉ざし、時には激しく反発して、マーヴェリックは苦悩する。

そのマーヴェリックに、ルースターにも米海軍にも、おまえが必要なんだ、とアイスマンは説く。
アイスマンもすでに若くはなく、喉のがんによって声を失った設定になっている。

アイスマンを演じるキルマー自身も咽頭がんで一時声を失くし、俳優業を続けることが危ぶまれた時期があった。
そのキルマーが、グースの息子をしっかり導いてくれ、これはおまえにしかできない仕事だ(実際の映画ではそこまで説明的なセリフは話していないが)とクルーズに語りかけるシーンは、キルマー自身の実人生とオーバーラップしているのだ。

ルースターがトップガンにやって来たとき、彼をマーヴェリックに引き合わせ、マーヴェリックの持つパイロットとしての資質を受け継がせられるのは、大将となって人事権を行使できるアイスマンしかいなかった。
かつての僚友グースの息子を一人前にするために、マーヴェリックをトップガンに呼び戻すことこそ、アイスマンに残された最後の一番大事な仕事だったのだ。

また、そういう役割を、キルマーは自分の人生と重ね合わせて演じていた、と解釈することもできるだろう。
予想通り、マーヴェリックは単なる教官のポジションにとどまらず、自ら編隊長として戦闘機FA-18に搭乗し、僚機(ウイングマン)のパイロットにルースターを指名してミッションを遂行する。

こうして、アイスマン、マーヴェリック、グースの絆は、グースの息子ルースターと彼のライバル・ハングマン(グレン・パウエル)にまで引き継がれた。
僕と同じ59歳の人間が戦闘機を操縦し、困難な爆撃や熾烈なドッグファイトができるかどうか、などという至極現実的で常識的なツッコミを跳ね返し、観る者を感動させる映画的説得力が、このストーリーにはある。

そういう意味で、この映画は僕のような年老いた人間にこそ元気を与え、リピートしたいと思わせる映画なのだ。
ただ、僕はできるだけ予備知識を排して映画を観る主義のため、以上のような事情をあまり知らずに観たことが、あとになって大変悔やまれた。

だからこそ、リピーターが続出しているブームに便乗し、そういう社会現象の一部になって、もう一度観ておこうか、という気になったのです。
ちなみに、きょう足を運んだTOHOシネマズ六本木ヒルズのスクリーン8、MX4Dの劇場は満員。

ただ、これから観る方には、椅子が揺れたり、風が吹きつけたりといった演出の多いMX4Dより、スクリーンと音響の大きなIMAXのほうをお勧めします。
なお、きのう7月3日はトム・クルーズ60回目の誕生日でした。

採点は変わらず85点です。

2022劇場公開映画鑑賞リスト
※50点=落胆😞 60点=退屈🥱 70点=納得☺️ 80点=満足😊 90点=興奮🤩(お勧めポイント+5点)

7『PLAN75』(2022年/日、仏、比、華)85点
6『トップガン マーヴェリック』IMAX2D(2022年/米)85点
5『シン・ウルトラマン』(2022年/東宝)80点
4『英雄の証明』(2021年/伊、仏)80点
3『THE BATMAN−ザ・バットマン−』(2022年/米)80点
2『ドライブ・マイ・カー』(2021年/ビターズ・エンド)90点
1『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年/米)90点

TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン8
スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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