『プロミシング・ヤング・ウーマン』(WOWOW)🤗

Promising Young Woman
113分 PG12 2020年 アメリカ=フォーカス・フィーチャーズ
日本公開:2021年 配給:パルコ、ユニバーサル映画

開巻、夜な夜なバーでひとり泥酔しては男に引っかけられ、自宅に連れ込まれる主人公キャシー/カサンドラ・トーマス(キャリー・マリガン)の姿が描かれる。
ダイアン・キートン主演『ミスター・グッドバーを探して』(1977年)を下敷きにしているかのような出だしだが、キャシーは愛撫され始めた途端、目を剥いて男に食ってかかり、何もさせずに出て行ってしまう。

それなりの美貌と魅力の持ち主なのに、彼女はなぜ、こんな自らを貶めるような行為を繰り返しているのか。
筋書きが読めない序盤はいささか退屈したが、やがてキャシーがかつては大学医学部の成績優秀な学生であり、若くして将来を嘱望されていた女性(プロミシング・ヤング・ウーマン)だったにもかかわらず、何らかの事件にショックを受けて中退し、現在もそのトラウマを引きずっていることがわかってくる。

その事件とは、キャシーの4歳からの幼馴染で、ともに同じ医学部まで進んでいた親友ニーナが男子学生にレイプされ、警察に訴えても裁判で負けてしまい、ついには自殺してしまったというもの。
事件から7〜8年、いまだにニーナを救えなかったトラウマに悩まされているキャシーは、自分の身体目当てに言い寄ってくる男をやり込めることで憂さを晴らしていたのだ。

やさぐれていた日々の中、キャシーの勤めるコーヒーショップにやってきた時代の医学部の同級生、いまでは小児科医となっているライアン・クーパー(ボー・バーナム)と偶然再会し、彼の熱意にほだされて交際をスタート。
ようやく忌まわしい過去を振り切れそうだった矢先、かつてニーナをレイプした医師アル・モンロー(クリス・ローウェル)が赴任先のイギリスから帰国し、結婚を控えているとライアンに聞かされ、キャシーの復讐心が再燃する。

本来は非常におぞましい話で、結末もよく考えれば救いようがないのだが、ネタバレになるのでここには書きません。
監督・脚本・製作と一人三役を務めたエメラルド・ファネルは終始コメディータッチを崩さず、キャリー・マリガンもファネルの演出に応えて複雑なキャラクターを好演。

ファネルはこの監督デビュー作品で第93回アカデミー賞主要5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞。
マリガンも主演女優賞にノミネートされたが、こちらは惜しくも『ノマドランド』(2021年)のフランシス・マクドーマンドにさらわれている。

製作にはやはり才人として知られる女優、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年)でブレークしたマーゴット・ロビーが参加している。
とまあ、僕のような生半可なアラカンのオッサンにはとても太刀打ちできない、今時のオネーサンたちによって作られた傑作でありました。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2022リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

44『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(2018年/米)B
43『クワイエット・プレイス』(2018年/米)A
42『TOKYO VICE』#4虎穴虎子(2022年/WOWOW、HBO Max)B
41『TOKYO VICE』#3精神一到(2022年/WOWOW、HBO Max)C
40『ドニー・ダーコ』(2001年/米)B
39『スーパーマン&ロイス』シーズン1(6)「パワーの代償」(2021年/米)B
38『スーパーマン&ロイス』シーズン1(5)「スモールビルの良心」(2021年/米)B
37『TOKYO VICE』#2起死回生(2022年/WOWOW、HBO Max)B
36『TOKYO VICE』#1新聞記者(2022年/WOWOW、HBO Max)B
35『ふたりのウルトラマン』(2022年/NHK)A
34『スーパーマン&ロイス』シーズン1(4)「波乱の幕開け」(2021年/米)B
33『スーパーマン&ロイス』シーズン1(3)「人気者であることの特権」(2021年/米)B
32『カムバック・トゥ・ハリウッド‼︎』(2020年/米)B
31『すばらしき世界』(2021年/ワーナー・ブラザース)A
30『私は確信する』(2018年/仏、白)C
29『透明人間』(2020年/米)A
28『アナザーラウンド』(2020年/丁、蘭、瑞)A
27『スーパーマン&ロイス』シーズン1(2)「引き継いだもの」(2021年/米)A
26『スーパーマン&ロイス』シーズン1(1)「パワーの目覚め」(2021年/米)A
25『日本女侠伝 侠客芸者』(1969年/東映)A
24『昭和残俠伝 血染の唐獅子』(1967年/東映)B
23『大コメ騒動』(2021年/ラビットハウス)C
22『王の願い ハングルの始まり』(2019年/韓)A
21『フラッシュ・ゴードン』(1980年/米)B
20『タイムマシン』(2002年/米)C
19『アンダーウォーター』(2020年/米)C
18『グリーンランド−地球最後の2日間−』(2020年/米)B
17『潔白』(2020年/韓)B
16『ズーム/見えない参加者』(2020年/英)C
15『アオラレ』(2020年/米)B
14『21ブリッジ』(2019年/米)B
13『ムニュランガボ』(2007年/盧、米)C
12『ミナリ』(2020年/米)A
11『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(2021年/東宝映像事業部)C
10『死霊の罠』(1988年/ジョイパックフィルム)C
9『劇場版 奥様は、取扱注意』(2021年/東宝)C
8『VHSテープを巻き戻せ!』(2013年/米)A
7『キャノンフィルムズ爆走風雲録』(2014年/以)B
6『ある人質 生還までの398日』(2019年/丁、瑞、諾)A
5『1917 命をかけた伝令』(2020年/英、米)A
4『最後の決闘裁判』(2021年/英、米)B
3『そして誰もいなくなった』(2015年/英)A
2『食われる家族』(2020年/韓)C
1『藁にもすがる獣たち』(2020年/韓)B

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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