なぜ巨人はロッテに大敗したのか 「オープン戦だから」で片づけられないこれだけの敗因⚾️

見やすくなったクリアビジョンのスコアボードには前半から大敗の状況が…

久しぶりに東京ドームへオープン戦の巨人−ロッテを見に行ってきました。
ここでのゲーム取材は今月2日の西武戦以来で、来週金曜に開幕を控えている中、巨人のチーム状態がどの程度まで仕上がっているのか、結構楽しみにしていたんですけどね。

先発投手は2020年に東海大からドラフト2位で巨人入りした山﨑伊織(24)。
背番号19を与えられながら、入団前に右肘を壊していることが発覚し、トミー・ジョン手術を受けて1年目はリハビリに専念せざるを得なかったが、2年目の今年は開幕ローテーション入りが期待されている。

しかし、結果はロッテの強打者に打ち込まれて4回もたず、3回3分の1で80球を投げ、藤岡、レアードの2本塁打を含む7安打6失点で事実上のKOとなった。
記者席からグラウンドとモニターの両方を見ていた限りでは、山﨑伊が限界だったというより、原監督が我慢できなくなった感が強い。

ただ、ロッテ打線は昨季、パ・リーグ優勝まであと一歩と迫った破壊力を持ち、きょうもある程度主力を揃えている。
そういう相手を、病み上がりの投手に抑えてこいと言うのは、最初から無理な相談だったように思う。

同じことが、きのう一軍に合流したばかりの湯浅大(22)のスタメン1番起用にも言える。
湯浅は5年目で、公式戦では昨年プロ初安打、今年のオープン戦ではきのう初安打を打ったばかり。

1番打者探しが行き詰まっているいま、原監督としては、若手にチャンスを与えれば少しは期待に応えてくれると思ったのかもしれない。
しかし、結果は4打数ノーヒット。

それも道理で、相手先発のロッテ・小島(26、4年目)は昨季プロ初の10勝を挙げ、今季さらなる飛躍が期待されている先発陣の成長株であり、巨人・湯浅とは現時点での格が違う。
こういうパ・リーグの伸び盛りの投手にこそ、6年目で中堅に差し掛かりながら、いまひとつ伸び悩んでいる吉川尚をぶつけるべきではなかったか。

ここでロッテ側から取材した情報を書いておくと、井口監督、木村投手コーチら首脳陣は、この小島と二木をキャンプから先発陣の強化選手と位置付け、調整させてきた。
というのも、ロッテの〝見えない弱味〟は、実は先発投手陣のシーズン登板回数が他球団よりも少ないことにあったからだ。

例えば、全盛期のソフトバンク・千賀は180回以上、西武&楽天・岸は170回以上を投げ、シーズンを通してゲームを作り、リリーフ陣の負担を軽減していた。
しかし、ロッテではほとんどの先発陣の登板回数が150回台までで、そのぶんリリーフに頼らざるを得ないゲームが多くなり、ゲーム運びにおいても不確定材料が増える。

そこで、エース格の石川、柱の美馬に加えて、昨季5勝の二木、きょう6回1安打無失点の小島が170回も投げられるようになれば、今季は昨季以上に安定した戦い方ができるようになる。
ついでに書いておくと、そういう先輩たちがカードの頭でゲームを作ってくれたら、今年初めて開幕ローテに入る佐々木朗希(20、2年目)にも精神的に余裕が生まれ、2〜3番手として中6日で回しながら、自分のピッチングに専念させられるようになる、というのがロッテ首脳陣の計算なのです。

そういう投打のチーム作りが大詰めを迎え、井口監督が手応え感じているロッテに対して、巨人・原監督が起用したのは1番・湯浅、先発・山﨑伊。
繰り返すけれど、きょうのような格差のあるマッチアップで、まだプロの選手とは言えないような湯浅、山﨑伊に結果を出せ、というのが無理な相談だった。

こういうときこそ、昨年のいまごろ、Numberの巨人特集号でも書きましたが、かつての伊原、川相ヘッド、橋上作戦コーチのような、原監督に物申す参謀の出番のはず。
元木、阿部、桑田コーチはきょうの試合後、どんな意見を原監督に具申していたのだろうか。

リクエストの最中、これだけの大きさでリプレー映像を見られるようになったのはいいんですけどね

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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