『マトリックス レザレクションズ』(IMAX with Laser)😊

The Matrix Resurrections
148分 2021年 アメリカ=ワーナー・ブラザース

旧『マトリックス』シリーズ3部作から約20年後に製作された正統的続編。
長い年月を経てからの続編企画は最近の『ターミネーター』シリーズのようにドツボにハマるか、『スター・ウォーズ』のようにこれなら納得と思わせられるか、どちらかしかない。

と思い込んでいたので、それほど期待はせず、それでも前3作と同様に劇場で観ておきたくて、きのうTOHOシネマズ新宿へ足を運んだ。
結論から先に言えば、1999年の前シリーズ第1作『マトリックス』ほどの衝撃こそ感じられなかったものの、想像を上回る内容に、納得以上の感動を覚えました。

主人公の天才ハッカーにして人類の救世主・ネオ(キアヌ・リーブス)は、前シリーズ最終作『マトリックス レボリューションズ』(2003年)で、自分の命を犠牲にして仮想現実世界マトリックスを破壊したはずだった。
ところが、本作ではいまだに機械に支配されたマトリックスが継続しており、ネオはゲームの大ヒット作「マトリックス」を制作して世界的に有名になったゲームデザイナーのトーマス・アンダーソン、というお仕着せの人格を与えられている。

この世界では、ネオも恋人のトリニティー(キャリー=アン・モス)もすべてアンダーソンが創造したゲーム内の架空の人物であり、ヴァージョンも映画と同様に3作まで作られていて、3作目でネオが死に、マトリックスを滅亡させるというストーリーまで映画と同じにされていた。
ちなみに、現実にもマトリックスのゲーム版が販売され、PS5、Xbox向けのダウンロード版もあることは、ファンならすでにご存知の通り。

アンダーソンは度重なる悪夢に悩まされ、情緒不安定な状態が続いており、精神科アナリスト(ニール・パトリック・ハリス)に安定剤のカプセルを処方されている。
そうした中、アンダーソンを呼び出したゲーム会社の社長スミス(ジョナサン・グロフ)は、マトリックスの4作目を作るように親会社のワーナー・ブラザースが圧力をかけてきている、従わなければマトリックスの権利のすべてを取り上げるそうだ、と通告。

スミスと言えば、前シリーズではネオの最大の敵(演じていたのはヒューゴ・ウィーヴィング)だったから、このあたりで少しずつ本作の仕掛けや設定が明らかになってくる。
アンダーソンがコーヒーショップでティファニー(キャリー=アン・モス)という女性に声をかけ、知り合ったばかりなのにお互いの存在が気になってならなくなる、というところまでくれば、前3作を観ているファンならスムーズにその後のストーリーに乗っていけるだろう。

観客に過去の内容やエピソードを思い出させるためか、前3作の重要な場面が挿入されているのも、僕のような年寄りのファンには実にありがたく、ああ、あったなあ、そうか、あの出来事がこのシーンにつながってくるのかと、いちいち内心でうなずきながら複雑な展開を追うことができた。
また、アンダーソンをふたたび覚醒させようとする新キャラクター、新しいモーフィアス(ヤーヤ・アブドゥル・マティーン2世)、バッグス(ジェシカ・ヘンウィック)、サディー(フリヤンカー・チョーブラ)ら多様性に富んだキャスティングも非常に魅力的。

正直なところ、革新的な映像、音楽、ファッションがぎっしり詰まった1999年の第1作を映画館の大スクリーンで観た時のインパクトとは比較にならないものの、どんでん返しのつるべ打ちが連発されるクライマックスは迫力たっぷり。
前3作で観客が胸を震わせたであろう名場面を、また新たなアレンジ施したを再現した見せ場には無性にうれしくなった。

ただし、これはあくまで、前シリーズを3作すべて鑑賞し、本作の世界観をある程度理解している上での感想であり、前シリーズをまったく観ていない観客が楽しめるかどうかは何とも言えない。
ネオ、トリニティー、スミス、モーフィアスなど、核となる登場人物についても、前提となる予備知識がなければ、彼らが何を言っているのかさっぱりわからない可能性もある。

なお、監督ラナ・ウォシャウスキーはてっきり前シリーズを手がけたウォシャウスキー兄弟の妹かと思ったら、2008年に性別適合手術を受けたラリーの新しい名前。
ともに前3作の監督に当たった弟のアンディも2012年にトランスジェンダーであることをカミングアウトし、現在はリリーと名乗っている。

採点は80点です。

TOHOシネマズ新宿・日比谷・渋谷・上野、丸の内ピカデリー、グランドサンシャインシネマ池袋などで上映中

2021劇場公開映画鑑賞リスト
※50点=落胆😞 60点=退屈🥱 70点=納得☺️ 80点=満足😊 90点=興奮🤩(お勧めポイント+5点)

6『BELUSHI べルーシ』(2020年/米)80点
5『MINAMATA−ミナマタ−』(2020年/米、英)75点
4『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年/英、米)75点
3『ファーザー』(2021年/英、仏)90点
2『ゴジラvsコング』(2021年/米)70点
1『SNS 少女たちの10日間』(2020年/捷克)80点

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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