今年最後の野球、都市対抗決勝が教えてくれたもの⚾️

広島カープ・栗林による始球式

今年の野球取材もきょうの第92回都市対抗野球大会決勝戦、東京ガス(東京都)-Honda熊本(大津町)でとうとうおしまいとなりました。
大会の掉尾を飾る最終戦とあって、試合前には両チームの監督、チームマスコット、先発メンバーがひとりひとり紹介され、スタンドに向かって挨拶。

国歌斉唱のあとには、これも恒例の始球式に、現広島カープの新人投手・栗林良吏が古巣・トヨタ自動車のユニフォームを着てマウンドに上がった。
打席には熊本の1番打者・山本卓弥(24)が立ち、さて、栗林ならきっちりストライクを投げるんだろうなと予想していたら、案に相違して高めにすっぽ抜けたボール球。

どうしたのかと思ったら、この〝大役〟の依頼に結構緊張して、力んでしまったらしい。
ちなみに、栗林のトヨタ入社1年目の2019年には、決勝戦の始球式に落合博満さんが東芝のユニフォーム姿で登場しているから、自分では〝役不足〟ではないかと感じたとしても無理はないかな。

ラッキー7の盛り上がる三塁側スタンド、東京ガスの応援団

試合はきのうセガサミーに競り勝った熊本の先発・横川楓薫(25)が立ち上がりから乱調で、初回に自らの四死球3個がからんでいきなり3失点。
東京ガスは熊本のリリーフ陣からも四回に2点、六回に1点を追加して、ここから一方的な展開となってしまった。

ところが、6-2と東京ガスが4点リードで迎えた九回表、抑えの宮谷陽介(30)が簡単に2死を取ってから、予想だにしなかった反撃のドラマが起こる。
途中出場の熊本・丸山竜治(21)が3ラン本塁打を放って1点差に追い上げ、なおも単打2本を連ねて一、二塁として、迎えた打者は六回にソロ本塁打を放っている中島準矢(25)。

ここでまた一発出れば逆転という場面で、今度は宮谷が踏ん張り、中島を空振り三振に取ってゲームセット。
終わってみれば、この決勝戦もまた、今年の野球シーズンを締め括るのに相応しい熱戦となりました。

優勝を決めた直後、マウンドの宮谷を囲んで喜び合う東京ガスの選手たち

東京ガスは創部94年目にしての初優勝で、山口大輔監督以下、選手やコーチの喜びと感慨も尋常一様ではなかった。
試合後のインタビューで山口大輔監督がまず称えたのは、今大会はここまでリリーフに回っていながら、決勝の先発に抜擢した途端、6回3分の2を6安打1失点と好投した臼井浩(うすい・いさむ27)。

その臼井は橋戸賞(都市対抗のMVP)を受賞し、目を潤ませながら、「勝てなかった時期を乗り越えて、やっとチームを勝たせられる投手になれたのでうれしいです」と実感のこもったコメント。
2安打2打点と活躍した打のヒーロー、相馬優人(24)は感激のあまりか、マイクの前で落涙してインタビュアーの質問が聞き取れず、2度「最高でーす!」と絶叫してスタンドを沸かせていました。

表彰式で悲願の黒獅子旗が東京ガスに

30年以上野球を取材しているけれど、都市対抗をこれほどじっくり観戦することができたのは今回が初めて。
正直に打ち明けると、社会人ナンバーワンの象徴である黒獅子旗を実際に現場で見て、閉会式最後の国旗降納まで立ち合ったのも初めてでした。

それにしても、東京ガスが創部94年目にして初の決勝進出と初優勝を成し遂げた一方で、熊本には九州勢として67年ぶりの優勝がかかっていたという。
プロ野球に優るとも劣らない、そうした社会人野球の先人たちが築いてきた長い歴史が、今大会の熱気と盛り上がりの源だったのかもしれません。

この大会に関わったすべてのみなさん、お疲れ様でした。
そして、素晴らしいゲームをありがとうございました。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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