今年の野球、大トリは都市対抗⚾️

東京ドームの前のトーナメント表

コロナ前は例年7月に東京ドームで行われていた社会人の都市対抗野球大会、今年はコロナ禍の影響と東京オリンピックの開催期間とかぶったため、きょうから開幕となった。
これまではプロ野球、高校野球の夏の甲子園と重なることが多く、注目度もいまひとつだったのだが、今年は堂々たる野球大会の大トリである。

おかげで、僕としては1988年に野球の取材を始めてから33年目にして、初めて都市対抗をじっくり取材できるのです。
大会前、昨年からHonda(狭山市)の投手コーチを務めている元巨人・木村龍治さんから「今年も優勝目指して頑張ります」とLINEでメッセージをもらったこともあり、久しぶりに取材に足を運んでみました。

試合開始30分前に水道橋駅に着いたら、東京ドームの前は結構な人出。
第1試合に出場するHondaやJR東日本東北(仙台市)の社員が案内板を掲げて、「応援する方はこちらです」と声を張り上げている。

入場者数の上限は1試合につき1万5000人で、昨年はコロナ禍で禁止された都市対抗の名物、各都市の特色を打ち出した楽しい応援合戦が復活。
一、三塁側スタンドの特設ステージでブラスバンドが賑やかに音楽を奏でる中、第1試合ではHondaのチアガールが華やかなダンスを披露する一方、JR東日本東北は仙台市のゆるキャラ「むすび丸」が登場し、東京ドームを大いに盛り上げていた。

きょう最も注目していた選手は、桐蔭横浜大4年だった昨年から注目され、来年のドラフト上位候補と言われるHondaの新人先発投手・片山皓心(23=新人)。
大学2年のころまでは120㎞程度だった球速が常時140㎞台までアップし、四隅のコーナーを突くコントロールも抜群、という触れ込みに加えて、木村コーチが指導に当たっているのだから、僕としては期待しないわけにはいかない。

初回の立ち上がり、スピードは予想したほどではなかったが、それでも内野安打1本に抑えた内容はまずまずで、これなら十分ゲームを作れるだろう、と思わせた。
が、その後も一向に球速が上がらず、高めに抜ける球が増え、二、三回と続けて先頭打者を出し、三回には自らの死球もからんで先制点を献上し、ここまでで降板。

今年は日本選手権までは調子がよかったのだが、7月あたりからスピードを上げようとして力んでしまい、そこから本来のキレやコントロールをなくしてしまったらしい。
シーズンオフの間にしっかりと課題を克服し、来年のドラフトまでにプロのスカウトの注目を集められる存在になれるか、いまが勝負どころかもしれない。

ちなみに、Hondaには野手にも気になる存在がいて、そのひとりが元プロだった真一さん(たくぎん→ダイエー→ヤクルト、現オリックス編成担当)を父に持つ4番レフト・佐藤竜彦(27)。
父親と同じ右打者で、顔、構え、スイングの鋭さも父親を彷彿とさせ、四回の第2打席ではセンターの頭を越える二塁打を打っている。

また、7番セカンド・篠塚宜政(32)は、もうプロには行かないだろうけど、巨人のオールドファンなら一度は見ておくことをお勧めします。
と書いたらお察しの通り、彼の父親は元巨人の篠塚和典さんで、お父さんと同じ左打ち、スリムな体型、フォーム、セカンド守備まで瓜二つなのです。

この日は2打席ノーヒットだったが、バットがボールに当たると、お父さんと同じようにゴロがスルスルと内野手の間を抜けてヒットになるんじゃないかと、つい錯覚しそうになる。
2個のフライを無難に処理した守備もお父さんにそっくりだった。

しかし、HondaはJR東日本東北に3-5で敗れ、昨年の優勝チームが早くも初戦で、それも開幕したその日の第1試合で姿を消してしまった。
できることなら連覇までお付き合いしたかったのに、残念。

それはそれとして、大勢のお客さんが詰めかけ、鳴り物付きの応援がある野球は、久しぶりだととても楽しい。
コロナ前は、正直、うるさいなあ、と感じることも少なくなかったけど、ファンが楽しめるスポーツエンターテインメントの空間は賑やかなのに越したことはない、のかな、やっぱり。

第2試合、初出場のエイジェックを応援するお客さんはこんなにいっぱい
スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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