『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』😉

Lo Chiamavano Jeeg Robot
119分 2015年 イタリア 日本公開:2017年 ザジフィルムズ 

日本の漫画&アニメーションが世界的影響を与えている好例のひとつで、単なるリメイクや翻案にとどまらず、しっかり元ネタを生かした独自の人間ドラマに仕上げている快作。
にもかかわらず、最近ではすっかり忘れ去られているようなので、劇場公開時に観た過去記事を以下に再録します。

2017年に初めて映画館へ足を運ぶ時間ができ、とりあえず見に行ったのがこの作品。
個人的には久しぶりのマカロニ・アクション、しかも永井豪原作の巨大ロボットアニメ『鋼鉄ジーグ』(1975~76年/NET=現テレビ朝日)をモチーフにした異色作、と週刊新潮で北川れい子さんが絶賛していたから気になっていたのですよ。

オープニングで、爆弾テロに揺れるローマの街を疾走するひとりの男、彼をバイクで追う2人組の姿が描かれる。
てっきりテロと関係があるのかと思ったら、逃げているのは腕時計を1個盗んだだけのコソ泥だった、ということがあとからわかる、という出だしからして人を食っている。

このエンツォ(クラウディオ・サンタマリア)というコソ泥が逃亡の途中、身を隠そうとテヴェレ川に潜った矢先、黄色いドラム缶の蓋を踏み抜くと、これが不法投棄された放射性廃棄物だった。
コールタールのような液体を全身に浴びて以来、メタボ体型のエンツォは人並みはずれたパワー、9階から落下しても銃弾を撃ち込まれてもすぐ治ってしまう頑丈な身体に変身。

アメリカ映画ならここからスケールの大きな犯罪に発展、次から次へと超人パワーの見せ場を繰り出すところだが、地味で規模の小さなイタリア製B級エンタテインメントだけにそうはいかない。
エンツォは夜中にATMをビルの壁から引っ剥がしたり、その金を使って(?)エロDVDや好物のカスタード・プリンを大量に買い込んだり、実にみみっちく私利私欲を満たそうとするくだりが笑わせる。

そんなエンツォに向かって、「あなたのパワーを泥棒なんかに使ってはいけないわ、ロボット・ジーグのように私と人類を守るのよ!」と言い募るヒロインが、年老いたコソ泥仲間セルジョ(ステファノ・アンブロジ)の一人娘アレッシア(イレニア・パストレッリ)。
娘といってもすでに30歳過ぎ、過去のレイプ体験から精神を病んでいて、つい最近まで療養施設に入れられており、ふだんはDVDプレーヤーで『鋼鉄ジーグ』を見るのが一番の楽しみ、というニートオタクであることがだんだんわかってくる。

セルジョは麻薬取引の現場のトラブルで射殺され、エンツォがその麻薬を隠し持っているのではないかと睨んだギャングのツィンガロ(ルカ・マリネッリ)がエンツォとアレッシアをつけ狙う。
そうした最中、エンツォがATMを力づくで強奪している画像がYouTubeによって拡散、マスコミに「スーパークリミナル」と名づけられ、警察も捜査を開始した。

いくらスーパーマンのような力を得ても、目先の損得や自分の欲求を満たすことしか考えられないエンツォが、次第におつむの弱いアレッシアに感化されてゆく過程が、定石通りだとわかっていても面白い。
クライマックスでツィンガロの犯罪を防ごうとエンツォが一般市民のバイクを拝借、「あなたは誰ですか」とバイクの持ち主に尋ねられると、「おれはヒロシ・シバ(司馬宙=ジーグに変身する主人公のサイボーグ少年)だ」と告げる場面など、原作アニメを知らなくてもグッとくるはず。

アメリカ映画のようにCGやVFXにバカガネをかけられないためか、エンツォがパワーを発揮するアクション・シーンがいささか安っぽく見えてしまうのはご愛嬌か。
そのぶん、敵役ツィンガロのマルネッリが頑張っており、往年のマカロニ・ウエスタンを彷彿とさせる毒々しくもテンションの高い悪役ぶりを披露している。

監督・製作はこれが長編デビュー作となったガブリエーレ・マイネッティ、脚本も日本では本作しか公開されていないニコラ・グアッラリョーネ。
とはいえ、鋼鉄ジーグとジャパニメーションのキモはしっかり押さえており、本作を観た原作者・永井豪は大いに感激したというコメントを寄せている。

僕と同様、原作アニメを見たことのある世代なら、ラストシーンには結構シビれることでしょう。
ちょっと『ダークマン』(1990年、サム・ライミ監督、リーアム・ニーソン主演)をパクっているような気もするけどね(ということは、続編もつくるつもりなのかな)。

オススメ度B。

旧サイト:2017年05月28日(日)付Pick-up記事を再録、修正

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

106『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』(2020年/米)A
105『真犯人』(2019年/韓)B
104『ダイヤルM』(1998年/米)B※
103『ダイヤルMを廻せ!』(1954年/米)A
102『私は告白する』(1953年/米)A
101『黄泉がえり』(2003年/東宝)B
100『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994年/米)B
99『ワンダーウーマン 1984』(2020年/米)B
98『博士と狂人』(2019年/英、愛、仏、氷)C
97『追悼のメロディ』(1976年/仏)A※
96『デ・パルマ』(2015年/米)B
95『ブルース・スプリングスティーン 闇に吠える街 30周年記念ライブ2009』(2009年/米)B
94『ブルース・スプリングスティーン ライブ・イン・バルセロナ』(2003年/米)A
93『ブルース・スプリングスティーン ライブ・イン・ニューオリンズ2006~ニューオリンズ・ジャズ・フェスティバル』(2006年/米)B
92『ウエスタン・スターズ』(2019年/米)B
91『水上のフライト』(2020年/KADOKAWA)C
90『太陽は動かない』(2021年/ワーナー・ブラザース)C
89『ファナティック ハリウッドの狂愛者』(2019年/米)C
88『ミッドウェイ』(2019年/米、中、香、加)B
87『意志の勝利』(1934年/独)A
86『美の祭典』(1938年/独)B
85『民族の祭典』(1938年/独)A
84『お名前はアドルフ?』(2018年/独)B
83『黒い司法 0%からの奇跡』(2019年/米)A
82『野球少女』(2019年/韓)B
81『タイ・カップ』(1994年/米)A※
80『ゲット・アウト』(2017年/米)B※
79『アス』(2019年/米)C
78『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』(2018年/米)C
77『キング・オブ・ポルノ』(2000年/米)B※
76『怒りの葡萄』(1940年/米)A
75『パブリック 図書館の奇跡』(2018年/米)A
74『バクラウ 地図から消された村』(2019年/伯、仏)B
73『そして父になる』(2013年/ギャガ)A※
72『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A※
71『歩いても 歩いても』(2008年/シネカノン)
70『東京オリンピック』(1965年/東宝)B※
69『弱虫ペダル』(2020年/松竹)B
68『ピンポン』(2002年/アスミック・エース)B
67『犬神家の一族』(2006年/東宝)B
66『華麗なる一族』(2021年/WOWOW)B
65『メメント』(2000年/米)B
64『プレステージ』(2006年/米)B
63『シン・ゴジラ』(2016年/米)A※
62『GODZILLA ゴジラ』(2014年/米)B※

61『見知らぬ乗客』(1951年/米)B
60『断崖』(1941年/米)B
59『間違えられた男』(1956年/米)B
58『下女』(1960年/韓)C
57『事故物件 恐い間取り』(2020年/松竹)C
56『マーウェン』(2019年/米)C
55『かもめ』(2018年/米)B
54『トッツィー』(1982年/米)A※
53『ジュディ 虹の彼方に』(2019年/米)B
52『ザ・ウォーク』(2015年/米)A※
51『マン・オン・ワイヤー』(2008年/米)B※
50『フリーソロ』(2018年/米)A
49『名も無き世界のエンドロール』(2021年/エイベックス・ピクチャーズ)B
48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B※
4『宇宙戦争』(1953年/米)B※
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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