『太陽は動かない』(WOWOW)🤨

111分 2021年 ワーナー・ブラザース

同名原作小説の著者・吉田修一の作品は『路(ルウ)』(2012年)を読んだことがあり、映画化された『悪人』(2010年)、『怒り』(2016年)もなかなか面白かった。
本作はその吉田のスパイ小説を映画化したもので、ホリプロ60周年記念作品として製作された大作である。

オープニング早々、ブルガリアのソフィアで主人公・鷹野一彦(藤原竜也)と田岡亮一(竹内涼真)が中国人ギャングに拉致されていた仲間・山下竜二(市原隼人)を救出。
すぐさま追ってきた中国人たちと激しいカーチェイスが繰り広げると、鷹野と田岡の奮闘も虚しく、山下は心臓を破裂させて死んでしまう、というツカミは圧巻。

日本映画には珍しく、ハリウッドの〈ミッション・インポシブル〉シリーズや〈ボーン・アイデンティティー〉シリーズを彷彿とさせる派手な出だしで、これなら面白くなりそうだと期待させた。
鷹野、田岡、山下は〈AN通信〉というメディアを装った産業スパイ組織のエージェントで、中国の総合エネルギー企業〈CNOX〉が日本の大手電機企業〈MET〉の技術を盗み、世界のエネルギー業界を牛耳ろうする陰謀を阻止するのが目的だった、という設定も日本映画らしからぬスケールの大きさである。

AN通信のメンバーは心臓に自爆装置のチップを埋め込まれており、24時間以内に一度の定時連絡を怠ると、情報部部長・風間武(佐藤浩市)による遠隔操作で爆破装置が起動。
5分以内に電話でアクセスコードとパスワードを送信しなければチップが爆発して死ぬ、という制約を課せられているのは何故なのか判然としないが、そのうちわかるだろうと、最初のうちは思わせる。

しかし、このままハリウッド製スパイ映画のようにスピーディーに見せ場をつないでいくのかと思ったら、せっかくの流れがブツンと断ち切られ、鷹野の少年時代を振り返るくだりが延々と続く。
その後、過去と現在を行ったり来たりしながらストーリーが進行し、時々分割画面になったりするので、ジェットコースター的な展開を期待していたこちらには何ともまどろっこしい。

香港の高層ビルでの鷹野と韓国人スパイのデイヴィッド・キム(ピョン・ヨハン)との対決、ブルガリア発ロシア行きの列車内での中国人ギャングとの大乱闘など、中盤からクライマックスにかけてからもアクション場面の見どころは多い。
しかし、AN通信の内幕、風間と高野の過去、彼らに絡んでくるキムやAYAKO(アン・ヒョジュ)の存在など、原作の材料をあれもこれもと詰め込み過ぎた結果、交通整理ができなくなったようだ。

そのため、数々の見せ場がすべてぶつ切りになってしまい、クライマックスへ向けての盛り上がりを醸成できていない。
AN通信のエージェントに爆薬チップが埋め込まれている理由も結局はよくわからず、最後の見せ場となる貨物船に鷹野が辿り着いた経過もまったく説明されていない、というのは看過できない欠点。

原作は3部作で、今回映画化されたのは最初の2部作。
3作目も映画化するのかどうかは知らないが、作るのであれば、もっとわかりやすく、楽しめる構成を望みたい。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

91『ファナティック ハリウッドの狂愛者』(2019年/米)C
90『ミッドウェイ』(2019年/米、中、香、加)B
89『意志の勝利』(1934年/独)A
88『美の祭典』(1938年/独)B
87『民族の祭典』(1938年/独)A
86『お名前はアドルフ?』(2018年/独)B
85『黒い司法 0%からの奇跡』(2019年/米)A
84『野球少女』(2019年/韓)B
83『タイ・カップ』(1994年/米)A※
82『ゲット・アウト』(2017年/米)B※
81『アス』(2019年/米)C
80『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』(2018年/米)C
79『キング・オブ・ポルノ』(2000年/米)B※
78『怒りの葡萄』(1940年/米)A
77『パブリック 図書館の奇跡』(2018年/米)A
76『バクラウ 地図から消された村』(2019年/伯、仏)B
75『そして父になる』(2013年/ギャガ)A※
74『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A※
73『歩いても 歩いても』(2008年/シネカノン)
72『東京オリンピック』(1965年/東宝)B※
71『弱虫ペダル』(2020年/松竹)B
70『ピンポン』(2002年/アスミック・エース)B
69『犬神家の一族』(2006年/東宝)B
68『華麗なる一族』(2021年/WOWOW)B
67『日の名残り』(1993年/英、米)A※
66『メメント』(2000年/米)B
65『プレステージ』(2006年/米)B
64『シン・ゴジラ』(2016年/米)A※
63『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B※
62『GODZILLA ゴジラ』(2014年/米)B※

61『見知らぬ乗客』(1951年/米)B
60『断崖』(1941年/米)B
59『間違えられた男』(1956年/米)B
58『下女』(1960年/韓)C
57『事故物件 恐い間取り』(2020年/松竹)C
56『マーウェン』(2019年/米)C
55『かもめ』(2018年/米)B
54『トッツィー』(1982年/米)A※
53『ジュディ 虹の彼方に』(2019年/米)B
52『ザ・ウォーク』(2015年/米)A※
51『マン・オン・ワイヤー』(2008年/米)B※
50『フリーソロ』(2018年/米)A
49『名も無き世界のエンドロール』(2021年/エイベックス・ピクチャーズ)B
48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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