『パブリック 図書館の奇跡』(WOWOW)🤗

The Public 
119分 2018年 アメリカ=グリニッジ・エンターテインメント 
アメリカ公開:2019年 日本公開:2020年 ロングライド

アメリカ中西部のオハイオ州シンシナティ市に行ったことはないが、冬はかなり冷え込む地域らしく、最も寒い1月は平均気温がマイナス0.5℃まで下がるという。
そのため、ホームレスにとって入館料も制限時間もない公立図書館は、朝から夕方まで暖を取るのに格好の場所だ。

本作は、そんなホームレスが図書館の玄関前に行列をなして朝9時の開館を待ち、扉が開くや否や洗面所に駆け込んで歯を磨いたり、顔を洗ったり、彼らの一日の始まりを描く場面から始まる。
主人公スチュアート・グッドソン(エミリオ・エステベス)をはじめとする図書館員たちも、そんなホームレスをあえて追い出そうとはせず、閉館時刻の午後6時まで、彼らが重い思いに時間を過ごすことを黙認していた。

しかし、シンシナティが記録的な大寒波に襲われたある日、市内のホームレス用シェルターはどこも定員に達してしまい、夜まで図書館の3階にいたホームレスたち70人は出ていこうとしない。
3階担当のグッドソンはホームレスたちを強制退去させることができず、彼らと一緒にフロアに立て篭もる羽目になる。

グッドソンは以前、悪臭を漂わせているホームレスをひとり無理矢理退館させた〝前科〟があり、逆上したホームレスは市を訴えて75万ドルの賠償金を請求。
これを苦々しく思っていて市の検察官で、次期市長選に立候補しているジョシュ・デイヴィス(クリスチャン・スレーター)はかねてからグッドソンを解雇しようと企んでいた。

デイヴィスはこの機会を利用し、テレビカメラに向かってグッドソンはこの事件の首謀者で、武器を使って100人のホームレスを人質に取って籠城しているのだと主張。
さらに、グッドソンがかつてはアルコール中毒とドラッグ中毒で、何年かホームレスだった時期もあり、図書館に雇われる前は更生施設に通っていたことを暴露する。

ここで怒りに燃えたグッドソンが激情に駆られ、暴力的な手段に訴えたら、こういうパターンなら何度も観た、と思ったことだろう。
ところが、グッドソンは地元テレビ局の女性リポーター、レベッカ・パークス(ガブリエル・ユニオン)の電話取材を利用し、図書館員ならではの独白を行い、これが市民たちの共感を呼び起こすことになる。

主演のエステベスは監督・脚本・製作も兼務しており、意表を突いた筋立てに加えて、非常に抑制の聞いた演技と演出で観る側を最後まで引っ張る。
悪役リポーターのパークスの使い方、市警交渉人ビル・ラムステッド(アレック・ボールドウィン)と息子マイク(ニック・パジック)の関係など、もっと膨らませられるキャラクターやエピソードをあえて現実的に処理しているあたりも、作品全体にリアリティを与えている。

観終わって、しみじみと、いい映画を観たな、という実感が込み上げてくる。
もうすぐ60歳のマーティン・シーンの息子、チャーリー・シーンの兄貴はただものではなかった。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

76『バクラウ 地図から消された村』(2019年/伯、仏)B
75『そして父になる』(2013年/ギャガ)A※
74『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A※
73『歩いても 歩いても』(2008年/シネカノン)
72『東京オリンピック』(1965年/東宝)B※
71『弱虫ペダル』(2020年/松竹)B
70『ピンポン』(2002年/アスミック・エース)B
69『犬神家の一族』(2006年/東宝)B
68『華麗なる一族』(2021年/WOWOW)B
67『日の名残り』(1993年/英、米)A※
66『メメント』(2000年/米)B
65『プレステージ』(2006年/米)B
64『シン・ゴジラ』(2016年/米)A※
63『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B※
62『GODZILLA ゴジラ』(2014年/米)B※

61『見知らぬ乗客』(1951年/米)B
60『断崖』(1941年/米)B
59『間違えられた男』(1956年/米)B
58『下女』(1960年/韓)C
57『事故物件 恐い間取り』(2020年/松竹)C
56『マーウェン』(2019年/米)C
55『かもめ』(2018年/米)B
54『トッツィー』(1982年/米)A※
53『ジュディ 虹の彼方に』(2019年/米)B
52『ザ・ウォーク』(2015年/米)A※
51『マン・オン・ワイヤー』(2008年/米)B※
50『フリーソロ』(2018年/米)A
49『名も無き世界のエンドロール』(2021年/エイベックス・ピクチャーズ)B
48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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