ヤクルトの「奥川さん」、10安打5失点でプロ初勝利⚾️

午後4時の開場直前、神宮球場正面玄関

きょうは神宮球場でヤクルト-広島3連戦取材の最終日。
ヤクルトは2年目の奥川泰伸が今季2試合目、プロ3試合目の先発登板で、相手は昨年11月10日のプロ初登板で滅多打ちにあった因縁のカープ、とくれば観に行かないわけにはいきません。

三塁側駐車場には毎度お馴染みカープグッズショップ

せっかく大切に育てているエース候補なのに、去年ボコボコにされた相手にあえてもう一度ぶつけるのはいかがなものか、と個人的には思わないでもない。
カープ戦は人気カードで、きのう、きょうはチケットが完売しているから、球団としてはここでもう一度奥川にスポットライトを当て、人気を煽りたいところではあっただろうけど。

しかし、こういうプレッシャーのかかる起用をされたら、緊張してガチガチになり、本来の力を発揮できないんじゃないか。
と、まだ子供っぽさの残る奥川の顔を見ていると、年寄りのA先生などはふとそう思ったりするんですが、奥川と同じ元高卒ドラフト1位で、コーチ経験もある球界OBによると、「まったくそんなことはない」そうです。

「だって、甲子園では毎日マスコミに囲まれて、いまよりもっと大勢のお客さんの前でマウンドに立って、それでも結果を出してきたやつなんだから、いまさらこのぐらいでビビったり、神経質になったりする心配はないでしょう。
もし奥川が打たれたら、それはプレッシャーがどうこうじゃなく、まだまだ力が足りないというだけのことですよ」

なるほど、そういうものか、と思いながら見守った奥川の立ち上がりは、初回2死から5安打4失点。
ダメだこりゃ、といかりや長介さんのような溜め息が出た直後のその裏、なんとヤクルト打線が3連打で無死満塁のチャンスをつくり、ここから押し出し四球、2連続犠飛、適時打と畳みかけ、たちまち4得点で同点に追いついたのだから野球は長い、いや、わからない。

しかし、雷雨のために午後6時から中断した試合が54分後に再開されると、奥川は三回、広島・鈴木誠に勝ち越しとなる今季1号本塁打を献上。
奥川は鈴木誠に対し、ここまで2打席連続安打、昨年11月10日の初対戦から数えると4打数4安打で、昨季の球団新記録・5年連続打率3割にも〝貢献〟しているという相性の良さ、いや、悪さである。

ところが、直後のその裏、またもヤクルト打線が2点を取り返して逆転し、奥川に勝利投手の権利が転がり込んだのだから野球は長い、いや、わからない。
ヤクルトはさらに、四回に中田のソロ本塁打、五回に広島・會澤の捕逸や山崎の適時打などで3点を加点。

こうして奥川は、5回84球、1本塁打を含む10安打5失点と散々な結果に終わりながら、とりあえず勝利投手の権利を残したまま降板となった。
結果だけ見ると、1本塁打を含む9安打5失点でKOされた昨年のデビュー戦と大差ないのに、やっぱり野球はわからない。

試合は結局、ヤクルトが11得点を挙げて大勝し、奥川がめでたくプロ初勝利。
初めてヒーローインタビューのお立ち台に上がると、「初回に打たれてしまいましたけど、野手のみなさんにたくさん点を取って頂いて、初勝利を挙げられて、うれしい気持ちでいっぱいです」。

ヒーローインタビューに答える奥川(テレビ画面より)

傑作だったのは、その隣に立っていた打のヒーロー・西浦直亨(29歳)のコメントの数々。
初回にいったん同点に追いついた4点目のタイムリーを振り返って、「きょうは奥川さんが投げるんで、何とか打線が援護しようという気持ちで打ちました」。

続いて、いったん突き放された直後にまた打った同点タイムリーについては、「やっぱり、奥川さんを何とか勝たせたいという気持ちでした」。
さらに、試合を決定づけた3本目のタイムリーは、「ここで打てば奥川さんに勝ちがつくんじゃないかと思って、食らいついていきました」。

西浦がそんなことを言うたびに、時節柄、スタンドからは拍手と控えめな笑い声が沸き起こる。
こういうアットホームな雰囲気がヤクルト(だけに限らないけど)のいいところだよね。

最後は、締めのセリフを求められた奥川が、「きょうはチームに勝たせてもらいましたけど、今度は僕がチームを助けられるように、1試合1試合、全力で頑張って、いいピッチングをしたいです」とキッパリ。
なるほど、先の球界OBが言うように、確かに甲子園の大舞台を踏んできたエース候補生ならではの落ち着き払った態度でした。

さて、こんなプロ初勝利、前例はあるんだろうかと思いをめぐらせ、すぐ頭に浮かんだのが日本ハム・斎藤佑樹のデビュー戦。
2011年4月17日、札幌ドームのロッテ戦に初登板初先発し、5回で1本塁打を含む6安打4失点だったが、打線が8点取ってくれたおかげで初勝利となった。

もちろん、あのときの斎藤と今の奥川の投球内容は随分違うけれど、きょうの奥川もまたツキと援護でプロ初勝利を拾ったようなもの。
高校時代から甲子園での快投を観ている僕としては、自分の実力で真の勝ち星を掴み取る姿を見たい。

それはそれとして、きょうの試合時間は3時間31分、中断54分を含めると4時間25分と、A先生が取材した中では今シーズン最長!
長い試合はもう勘弁してほしい!…って、しつこいかな。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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