『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド😁😳🤔🤓

Guns, Germs, and Steel: The Fates of Human Societies
/Guns, Germs, and Steel:A Short History of Everybody for the Last 13,000 Years
翻訳:倉骨彰 草思社:草思社文庫 
上巻 416ページ 定価900円=税別
 第1刷:2012年2月10日 第43刷:2020年3月25日
単行本発行:2000年 原著発行:1997年

新型コロナウイルスの感染拡大が本格化しつつあった去年の春先、都内の大型書店には〝感染症&パンデミック〟コーナーなるものができた。
小説ではカミュとデフォーの『ペスト』、小松左京『復活の日』、解説書では石弘之『感染症の世界史』、それにピューリッツァー賞一般ノンフィクション部門受賞作の本作などが平積みされていた。

どれもコロナ禍が始まる前から評価の定着していた作品で、昨年中の全作読了を目指してまとめ買いし、最後に年末年始休暇中にやっと読み終えたのが、一番大部の本書だった。
タイトルの『銃・病原菌・鉄』とは、本書第3章で著者自ら明かしているように、1万3000年前から「ヨーロッパ人が他の大陸を征服できた直接の要因を凝縮して表現したものである」。

他の大陸とは、主にアフリカ、南北アメリカ、オーストラリア、ニューギニア島嶼部などを指す。
そうした大陸の先住民たちは昔、まだ石器や弓矢程度の武器しか持っておらず、ヨーロッパ人たちが携えていた銃器、鉄器、軍用に飼育されていた馬などの兵器の前に屈服させられた。

それ以上に、ヨーロッパ人が意図せずして持ち込んだ感染症に対して、免疫や抗体のない先住民たちは抵抗のしようがなかったのだ、と著者は説く。
このあたりは、本書を参考にした『感染症の世界史』にも詳しく書かれていた通りだ。

では、なぜそのような〝民族間格差〟、言い方を変えれば〝大陸間格差〟、現代風にわかりやすく言えば〝地域格差〟が生まれたのだろうか。
本職は医者で、進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学にも造詣の深い著者は、その原因を各民族に固有の特質ではなく、各民族が生まれ育った大陸の地理的条件に求めている。

東西に広いユーラシア大陸では、ある地域に生まれた知恵や技術が横に伝播するスピードが早く、様々に競合する小社会が発生する条件がそろっていた。
それに引き換え、南北に長いアメリカ、アフリカでは地理的、気候的な障壁が多く、オーストラリア大陸は他の大陸と隔絶されていた上、砂漠地帯の多い土壌にも恵まれていなかった、というのだ。

そうした主張とは別に、僕にとって最も興味深かったのは、食糧生産、即ち農耕技術が人類史において果たした役割である。
ヨーロッパ人とユーラシア大陸以外の先住民との対決は、食糧を生産し、それを貯蔵できる農耕民族と狩猟採集民の対決だった。

自ら動植物を飼育・栽培することのできた農耕民族のヨーロッパ人は、余剰食料を貯蔵し、定住生活を可能にして人口を増やしていた。
すべての源は農耕にあり、政治的社会の形成はもちろん、それよりも早く他民族を駆逐する軍事力を伸ばすことに与って力があった、と著者は主張する。

そうした農耕民族のヨーロッパ人に対して、野生の動植物を採集・捕獲するしか生きる術のない狩猟採集民族の先住民には、食糧を保存しておくことも、1カ所に居を構えることもできず、獲物を求めて移住し続けるしかない。
これでは最初から勝負にならないわけで、農耕民族による入植・侵略の歴史的積み重ねが、現在の国家間の対立や格差の背景にもなっている。

著者によれば、同じ大陸の近隣地域に異なる複数の社会が生まれた場合、各社会の間で様々な知識や技術が伝わるのと比例して、各社会が競合するようになり、やがてこれに敗れた社会が勝った社会に併合されていく。
そうして、人類社会は、小規模血縁集団、部族社会、首長社会、そして国家へと規模を広げ、システムを複雑化させていった。

こういう論旨を読むと、人類社会から国家同士の戦争がなくなる日は永遠に訪れないだろう、という思いに至らざるを得ない。
現実に、世界中がコロナ禍に覆われたいま、アメリカと中国は手を携えて病原菌を駆逐しようとするのではなく、自分たちがコロナ禍を収束させ、その暁に世界政治のトップに君臨しようと躍起になっているように見える。

😁😳🤔🤓

下巻 432ページ 定価900円=税別
第1刷:2012年2月10日 第32刷:2019年10月31日

2021読書目録
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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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