『ザ・コミー・ルール 元FBI長官の告白』(前・後編/WOWOW)😉

The Comey Rule 全2話210分(1話105分) 
2020年 アメリカ:CBSテレビジョン・スタジオ、ショータイム
米本国初放送:9月27日 日本(WOWOW)初放送:11月1日

2017年、ドナルド・トランプ大統領にFBI長官を解任されたジェームズ・コミーの暴露本『より高き忠誠 A HIGHER LOYALTY 真実と嘘とリーダーシップ』(2018年/光文社)をテレビドラマ化した作品。
米本国では大統領選たけなわの9月27日に初放送され、わが国ではWOWOWが投票日2日前に日本初のオンエアに踏み切った。

1話105分の2話構成で、前編は2016年の大統領選当時、コミーが主導した民主党候補ヒラリー・クリントンの私用メール問題の調査の内幕。
後編ではまさかの当選を果たしたトランプ大統領がコミーに「俺に忠誠を誓え」と迫り、言を左右にしてかわし続けていたコミーがついに解任されるまでが描かれている。

原作がコミー自身による回顧録であるため、当然のことながら、ジェフ・ダニエルズ演じるコミーは、FBIで誰よりも慕われた長官であり、家庭では良き夫、良き父であり、信念と家族愛に生きた尊敬すべき人物になっている。
前編でFBIの若き職員、後編でロサンゼルス支局の捜査官たちに演説を行なっている場面はまるで学校の校長先生のようで、トランプ大統領の側近が「コミーは聖人君子気取りだ」と吐き捨てる場面が印象的だ。

ヒラリーの私用メール疑惑の調査については、「調査するに値しない」「やはり調査を開始する」と二度に渡って前言を翻し、結局は不正や選挙違反に相当する事実は発見されなかった。
しかし、投票日2週間前まで続いたこの疑惑はヒラリーにとって大きなイメージダウンとなり、彼女が大統領選に敗れたためにコミーは民主党支持者から激しい非難に晒される。

私見ながら、コミーの推理と指示に見込み違いがあったことは確かなのだから、このくだりはもう少し批判的に描いてもよかったのではないか。
また、後編に入ってトランプ大統領(ブレンダン・グリーソン)がいかにも悪役然として登場する一方、実は〝嫌われ者〟の側面もあったヒラリーはニュース映像だけで済ませ、俳優が演じる本人がまったく出てこない、というのも少々引っかかる。

後編ではトランプ大統領がコミーに執拗に面会を求め、大統領選の最中に様々な疑惑やスキャンダルが流されたことにこだわり、一連の報道の内幕を操作するように迫る。
とくに、CAの股間を鷲掴みにした、ロシアの売春婦を呼んで〝ゴールデンシャワー〟(放尿)をやらせたなどというセクハラ疑惑を何度も繰り返し、「メラニア(妻)が何と思うか」と気にしているくだりは、天下の世界的悪役もこんなものかと思わせる。

トランプを演じるグリーソンはなかなか雰囲気を出しているが、残念ながら現実のトランプの個性が強烈過ぎ、あれほど憎々しいキャラクターには達していない。
脇役では『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(2013年〜18年/ネットフリックス)で民主党の大統領主席補佐官ダグ・スタンパーを演じたマイケル・ケリーが、本作では実在のアンドリュー・マッケイブFBI副長官を控え目に演じているのが目に止まった。

今回の大統領選ではトランプ、民主党のジョー・バイデン両候補の間で火の出るような誹謗中傷合戦が繰り返された。
そうした中、このようにがっちり構成されたノンフィクション・ドラマを製作できるプロダクションと大手テレビ局がついているのは、共和党にはない民主党独自の強みではあるだろう。

果たして、このテレビドラマは現実の大統領選にどのような影響をもたらしたのか、あるいはもたらさなかったのか。
今回の大統領選は結果が出たあとも揉めるだろうから、興味のある人は観ておいたほうがいいでしょうね。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

119『ジェミニマン』(2019年/米)B
118『ガール・イン・ザ・ミラー』(2019年/加)B
117『ドッペルゲンガー』(2003年/アミューズピクチャーズ)B
116『屍人荘の殺人』(2019年/東宝)B
115『ドクター・スリープ』(2019年/米)B
114『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス7冠の真実』(2013年/米)A※
113『疑惑のチャンピオン』(2015年/英、仏)B※
112『陽だまりのグラウンド』(2001年/米)B
111『ホテル・ムンバイ』(2019年/豪、印、米)A
110『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018年/松竹)B
109『閉鎖病棟−それぞれの朝−』(2019年/東映)C
108『真実』(2019年/仏、日)A
107『氷の微笑』(1992年/米)B
106『チャーリーズ・エンジェル』(2019年/米)C
105『FBI:特別捜査班 シーズン1 #22対決の時』(2019年/米)C
104『FBI:特別捜査班 シーズン1 #21隠された顔』(2019年/米)B
103『FBI:特別捜査班 シーズン1 #20エジプトの要人』(2019年/米)B
102『轢き逃げ 最高の最悪な日々』(2019年/東宝)B
101『蜜蜂と遠雷』(2019年/東宝)B
100『ワン・カップ・オブ・コーヒー 栄光のマウンド』(1991年/米)A
99『ドリーム・ゲーム 夢を追う男』(1991年/米)B※
98『スラッガーズ・ワイフ』(1985年/米)B
97『死霊のはらわた』(2013年/米)C※
96『死霊のはらわた』(1981年/米)A※
95『脱出』(1972年/米)A※
94『ラスト・ムービースター』(2018年/米)B
93『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン3』(2015年/米)A
92『FBI:特別捜査官 シーズン1 #19白い悪魔』(2019年/米)B
91『FBI:特別捜査官 シーズン1 #18ラクロイ捜査官』(2019年/米)C
90『FBI:特別捜査班 シーズン1 #17秘密のデート』(2019年/米)C
89『世界の涯ての鼓動』(2017年/独、仏、西、米)C
88『殺人鬼を飼う女』(2019年/KADOKAWA)D
87『軍旗はためく下に』(1972年/東宝)A※
86『イングリッシュ・ペイシェント』(1996年/米)B
85『ラスト、コーション』(2007年/台、香、米)A
84『サンセット大通り』(1950年/米)A※
83『深夜の告白』(1944年/米)A
82『救命艇』(1944年/米)B※
81『第3逃亡者』(1937年/英)B※
80『サボタージュ』(1936年/英)B※
79『三十九夜』(1935年/英)A※
78『ファミリー・プロット』(1976年/米)A※
77『引き裂かれたカーテン』(1966年/米)C
76『大いなる勇者』(1972年/米)A※
75『さらば愛しきアウトロー』(2018年/米)A
74『インターステラー』(2014年/米)A
73『アド・アストラ』(2019年/米)B
72『FBI:特別捜査班 シーズン1 #16ラザロの誤算』(2019年/米)C
71『FBI:特別捜査班 シーズン1 #15ウォール街と爆弾』(2019年/米)C
70『FBI:特別捜査班 シーズン1 #14謎のランナー』(2019年/米)D
69『FBI:特別捜査班 シーズン1 #13失われた家族』(2019年/米)D
68『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン2』(2014年/米)A
67『記憶にございません!』(2019年/東宝)B
66『新聞記者』(2019年/スターサンズ、イオンエンターテイメント)B
65『復活の日』(1980年/東宝)B
64『100万ドルのホームランボール 捕った!盗られた!訴えた!』(2004年/米)B
63『ロケットマン』(2019年/米)B
62『ゴールデン・リバー』(2018年/米、仏、羅、西)B
61『FBI:特別捜査班 シーズン1 #12憎しみの炎』(2019年/米)B
60『FBI:特別捜査班 シーズン1 #11親愛なる友へ』(2019年/米)B
59『FBI:特別捜査班 シーズン1 #10武器商人の信条』(2018年/米)A
58『FBI:特別捜査班 シーズン1 #9死の極秘リスト』(2018年/米)B
57『病院坂の首縊りの家』(1979年/東宝)C
56『女王蜂』(1978年/東宝)C
55『メタモルフォーゼ 変身』(2019年/韓)C
54『シュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年/米)C
53『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1』(2013年/米)A
52『FBI:特別捜査班 シーズン1 #8主権を有する者』(2018年/米)C
51『FBI:特別捜査班 シーズン1 #7盗っ人の仁義』(2018年/米)B
50『FBI:特別捜査班 シーズン1 #6消えた子供』(2018年/米)B
49『FBI:特別捜査班 シーズン1 #5アローポイントの殺人』(2018年/米)A
48『アメリカン・プリズナー』(2017年/米)D
47『夜の訪問者』(1970年/伊、仏)D
46『運命は踊る』(2017年/以、独、仏、瑞)B
45『サスペクト−薄氷の狂気−』(2018年/加)C
44『ザ・ボート』(2018年/馬)B
43『アルキメデスの大戦』(2019年/東宝)B
42『Diner ダイナー』(2019年/ワーナー・ブラザース)C
41『ファントム・スレッド』(2017年/米)A
40『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年/米)B
39『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年/米)A
38『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年/米)A
37『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
36『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
35『下妻物語』(2004年/東宝)A
34『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
33『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
32『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
31『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
30『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
29『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
28『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
27『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
26『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
25『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
24『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
23『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
22『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
21『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
20『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
19『大脱出2』(2018年/中、米)D
18『大脱出』(2013年/米)B
17『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
16『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
15『グリーンブック』(2018年/米)A
14『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
13『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
12『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
11『前科者』(1939年/米)C
10『化石の森』(1936年/米)B
9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A 

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』、WEDGE Infinity『赤坂英一の野球丸』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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