『球界時評』万代隆😁🤔🤓

高知新聞社 280ページ 発行:2008年1月31日 定価1524円=税別

4~5月の自粛期間中、Facebookで〈7 days Book Cover Challenge〉というリレー形式のブックレビューで、共同通信の運動部プロ野球デスク・石原秀知氏が紹介していた一冊。
報知新聞・共同で健筆を振るわれた斯界の大先達・万代隆さんが1989〜2007年、共同に加盟する各新聞社に連載されていたコラムを抜粋し、加筆・修正したものがまとめられている。

コラムの良し悪しは、対象への愛情がこもっていることを前提として、その対象と距離が保てているかどうかで決まる、と僕は思う。
その点、プロ野球選手としては決して一流とは言えなかった、という以前に一種のイロモノとさえ見られていた南海(現ソフトバンク)・〝ドカベン〟香川の引退(1991年)を取り上げた一本は、絶妙の一語に尽きる。

もうひとつ重要なのが、野球ファンの話題を、自分の記憶やネタとどう結びつけて読者に、ははあ、なるほど、と思わせるか。
そういう意味で、1993年のキャンプで大騒ぎされた巨人の新人・松井と、その23年前の近鉄の新人だった太田幸司を重ね合わせた一本も印象に残る。

私のようなヘボライターがうっかり忘れていた傑作なエピソードも満載。
プロ野球審判の名セリフと言えば、二出川さんの「おれがルールブックだ」がつとに知られているが、1994年に審判を小突いて退場させられた近鉄・鈴木監督は「おれはルールブックより正しい」と開き直り、二出川審判の上を行った。

1988年から日刊ゲンダイのプロ野球記者となった僕は、時折万代さんを現場でお見かけしたが、親しくお話させていただいたことは一度もない。
サンケイスポーツやデイリースポーツの記者だった万代さんの弟さんとは時々、話をさせていただいた機会があり、そこへたまに万代さんが加わったことがあるくらいだ。

こういう昔の書き手の本を読むと、あのころ、もっとちゃんと話を聞いておくべきだった、という後悔の念がいつも湧く。
ただ、当時はこちらも生意気な盛りだったので、大先輩の話をおとなしく頷きながら聞いていたかどうか、自信がないのだが。

😁🤔🤓

2020読書目録
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※は再読、及び旧サイトからのレビュー再録

18『銀輪の巨人 GIANTジャイアント』野嶋剛(2012年/東洋経済新報社)😁🤔🤓
17『ロード・ウォリアーズ 破滅と絶頂』アニマル・ウォリアー著、児島修訳(2011年/東邦出版)😁😭😢🤔
16『虫明亜呂無の本・1 L’arôme d’Aromu 肉体への憎しみ』虫明亜呂無著、玉木正之編(1991年/筑摩書房)😁😭🤔🤓
15『洞爺丸はなぜ沈んだか』(1980年/文藝春秋)😁😭😢🤔🤓😱
14『オッペンハイマー 原爆の父はなぜ水爆開発に反対したか』(1995年/中央公論新社)🤔🤓
13『「妖しの民」と生まれきて』笠原和夫(1998年/講談社)😁😭😢🤔🤓
12『太平洋の生還者』上前淳一郎(1980年/文藝春秋)😁😭😳🤔🤓😖
11『ヒトラー演説 熱狂の真実』(2014年/中央公論新社)😁😳🤔🤓
10『ペスト』ダニエル・デフォー著、平井正穂訳(1973年/中央公論新社)🤔🤓😖
9『ペスト』アルベール・カミュ著、宮崎嶺雄訳(1969年/新潮社)😁😭😢🤔🤓
8『復活の日』小松左京(1975年/角川書店)🤔🤓
7『感染症の世界史』石弘之(2019年/角川書店)😁😳😱🤔🤓
6『2000年の桜庭和志』柳澤健(2020年/文藝春秋)😁🤔🤓
5『夜のみだらな鳥』ホセ・ドノソ著、鼓直訳(1984年/集英社)😳🤓😱😖
4『石蹴り遊び』フリオ・コルタサル著、土岐恒二訳(1984年/集英社)😁🤓🤔😖 
3『らふ』森下くるみ(2010年/青志社)🤔☺️
2『最期のキス』古尾谷登志江(2004年/講談社)😢😳
1『黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』奥山和由、春日太一(2019年/文藝春秋)😁😳🤔

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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