『ゴールデン・リバー』(WOWOW)😉

The Sisters Brothers 
120分 2018年 アメリカ、フランス、ルーマニア、スペイン=アンナプルナ・ピクチャーズ
日本配給:ギャガ 2019年

WOWOWのレギュラー番組『W座からの招待状』で放送された佳作。
WOWOWの月刊ガイドブックでは西部劇にカテゴライズされているが、ストーリーや雰囲気はむしろ1960〜70年代のアメリカンニューシネマに似ている。

僕のように1970年代から映画にハマった世代は、『夕陽の挽歌』(1971年)、『夕陽の群盗』(1972年)、『男の出発(たびだち)』(同年)といった作品群を思い出したファンが多いのではないだろうか。
実際、1954年生まれの監督ジャック・オーディアールは、僕よりもダイレクトにニューシネマの影響を受けた世代であり、アーサー・ペン監督の『小さな巨人』(1970年)、『ミズーリ・ブレイク』(1976年)を意識していたという。

舞台はゴールドラッシュ真っ盛りの1851年のオレゴン州。
原題のシスターズ・ブラザースとは主人公の殺し屋コンビの名前で、兄イーライをジョン・C・ライリー、弟チャーリーをホアキン・フェニックスと、ともに現代を代表する演技派が好演している。

オープニング早々、この兄弟が標的の一味を皆殺しにするシーンで凄腕と残忍さが印象づけられるが、闇夜なのでディテールがわかりづらく、ツカミとしてのインパクトはいまひとつ。
一仕事終えた兄弟は、闇社会で「提督」と呼ばれる雇主(ルトガー・ハウアー)から新たな仕事の依頼を受ける。

提督の調査員ジョン・モリス(ジェイク・ギレンホール)が、金発掘に役立つ薬の化学式を持ち逃げしたハーマン・ワーム(リズ・アーメッド)という盗っ人を追跡している。
彼らを追いかけてモリスと合流し、ワームを始末してこい、というのだ。

シスターズ兄弟はさっそくモリスとワームを追いかけ始めるが、このふたり、殺し以外の面では実にだらしがなく、道中でやることなすこと間が抜けている。
飲んだくれのチャーリーは馬に乗っている最中に居眠りして馬から落下するわ、そのチャーリーを介抱したイーライは眠っている最中に毒蜘蛛を食べてしまって熱を出すわ。

「なかなか追いつけないのは兄貴が病気なんかになるからだ!」とチャーリーが言い出せば、「先に酔っ払っていたおまえの面倒を見てやったのは俺だろう!」とイーライも反論。
このイーライのキャラクターがライリーの個性にピッタリで、初めて覚えた歯磨きにハマったり、駄馬と罵っていた馬が熊に殺されると号泣したり、冷酷無比な殺し屋とは思えない朴訥さが印象に残る。

一方、正体を偽ってワームと友だちになったモリスは、シスターズ兄弟が追いつくのを待っているうち、次第にワームの語る夢に感化され始める。
ワームはテキサス州で金を発掘したら、暴力に支配された西部から脱出し、誰もが幸せに暮らせる民主的な理想郷を築こう、という夢を抱いていた。

シスターズ兄弟がモリスとワームに追いついた矢先、ワームを狙っている別の追っ手に襲われ、4人は力を合わせて彼らを撃退。
こうして意気投合したシスターズ兄弟とモリスやワームは、提督を裏切って金の発掘を始めるが、そこへ提督の放った追っ手がやってくる。

終盤、金の発掘に血眼になったチャーリーが薬品の使い方を誤り、大火傷を負ってしまう、という展開は定石通りながら、このくだりも序盤の銃撃戦と同様、画面が暗くてわかりにくい。
また、薬品が高アルカリ性で皮膚を焼く危険性があるということも、シナリオの上でもっと丁寧に説明しておくべきだったと思う。

最後は、提督への復讐を誓ったシスターズ兄弟がテキサスからオレゴンへ戻り、さあ、いよいよクライマックスの大決戦か、と思ったら、何ともおかしなオチがつく。
独特の余韻があるエンディングに、これが現代のニューシネマなのかな、と妙な感慨が湧いた。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

61『FBI:特別捜査班 シーズン1 #12憎しみの炎』(2019年/米)B
60『FBI:特別捜査班 シーズン1 #11親愛なる友へ』(2019年/米)B
59『FBI:特別捜査班 シーズン1 #10武器商人の信条』(2018年/米)A
58『FBI:特別捜査班 シーズン1 #9死の極秘リスト』(2018年/米)B
57『病院坂の首縊りの家』(1979年/東宝)C
56『女王蜂』(1978年/東宝)C
55『メタモルフォーゼ 変身』(2019年/韓)C
54『シュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年/米)C
53『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1』(2013年/米)A
52『FBI:特別捜査班 シーズン1 #8主権を有する者』(2018年/米)C
51『FBI:特別捜査班 シーズン1 #7盗っ人の仁義』(2018年/米)B
50『FBI:特別捜査班 シーズン1  #6消えた子供』(2018年/米)B
49『FBI:特別捜査班 シーズン1 #5アローポイントの殺人』(2018年/米)A
48『アメリカン・プリズナー』(2017年/米)D
47『夜の訪問者』(1970年/伊、仏)D
46『運命は踊る』(2017年/以、独、仏、瑞)B
45『サスペクト−薄氷の狂気−』(2018年/加)C
44『ザ・ボート』(2018年/馬)B
43『アルキメデスの大戦』(2019年/東宝)B
42『Diner ダイナー』(2019年/ワーナー・ブラザース)C
41『ファントム・スレッド』(2017年/米)A
40『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年/米)B
39『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年/米)A
38『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年/米)A
37『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
36『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
35『下妻物語』(2004年/東宝)A
34『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
33『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
32『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
31『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
30『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
29『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
28『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
27『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
26『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
25『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
24『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
23『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
22『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
21『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
20『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
19『大脱出2』(2018年/中、米)D
18『大脱出』(2013年/米)B
17『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
16『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
15『グリーンブック』(2018年/米)A
14『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
13『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
12『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
11『前科者』(1939年/米)C
10『化石の森』(1936年/米)B
9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』、WEDGE Infinity『赤坂英一の野球丸』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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