『病院坂の首縊りの家』(NHK-BSP)😏

139分 1979年 東宝

NHK〈BSプレミアムシネマ〉で放送された1970年代の東宝のドル箱、市川崑、石坂浩二コンビの金田一耕助シリーズ最終作。
これは前4作よりもポスターのデザインが抜群にカッコよく、シリーズ自体もおしまいだからぜひ観たかったのだが、このトシになるまで機会がなかった。

アメリカ行きを決意した金田一(石坂)がパスポート用の写真を撮るため、吉野市に住む作家(横溝正史)に紹介された本條写真館を訪ねる。
すると、主人の本條徳兵衛(小沢栄太郎)が、「首縊りの家」と呼ばれる廃屋で頭に風鈴を落とされて殺されそうになった、その犯人を探してほしい、と金田一に依頼。

仕方なく金田一が吉野市に滞在することにした矢先、その写真館にやってきた若い女(桜田淳子)が、「今夜、ある場所に結婚写真を撮りにきてください」と2代目(徳兵衛の息子)の直吉(清水紘治)に告げる。
彼女が指定した場所もまた「首縊りの家」だった。

直吉が女の注文通り、彼女と夫(あおい輝彦)のツーショットを撮影し、写真が出来上がった日にふたたび「首縊りの家」を訪れると、そこには夫の生首が風鈴のように吊るされていた、という序盤の展開はなかなか快調。
しかし、この廃屋が「首縊りの家」と呼ばれるようになった経緯の説明に入ると、『女王蜂』(1978年)と同様、複雑に入り組んだ家族関係がわかりにくく、だんだんついていくのがしんどくなる。

事件の鍵を握っているのは、「首縊りの家」のある坂道が「病院坂」と称される由来になった法眼病院を経営する未亡人の弥生(佐久間良子)。
この弥生の娘・由香利が冒頭に登場した桜田淳子で、吉野市に滞在していたジャズバンドに、由香利と瓜二つの小雪という女がいることが、ストーリー上の大きなポイントになる。

弥生と法眼家、由香利と小雪がおぞましい秘密を抱えている、という設定は横溝ミステリの定番。
しかし、その周囲で暗躍する冒頭の生首男・山内敏男(あおい)、吉沢平次(ピーター)、写真館の直吉(清水)、五十嵐滋(河原裕昌)、車夫・三之介(小林昭二)らが何を考えているのか、人物像の描き方がどれもこれも中途半端で非常にわかりにくい。

とくに、敏男が法眼家に恨みを抱くようになった経緯の説明が大雑把に過ぎる。
実は、敏男が自殺を図ったのち、小雪に首を切断するよう依頼していた、という〝真相〟に至っては、はっきり言って理解不能。

しかし、そうした中、これだけは観ておいてよかったと言えるのは、果敢に由香利と小雪の1人2役に挑戦した当時のアイドル歌手・桜田淳子の雰囲気と演技力。
顔はそっくりなのに性格は真逆という2役をきっちり演じ分け、石坂浩二や佐久間良子を向こうに回して抜群の存在感を発揮している。

しかも、これが重要なのだが、清純なようでいながら、独特の色気を漂わせているところがいい。
結婚や統一教会に関する報道を機に第一線から引かなければ、大女優になれた可能性もあっただろうに、もったいないなあ、と改めて思いました。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

60『女王蜂』(1978年/東宝)C
59『メタモルフォーゼ 変身』(2019年/韓)C
58『シュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年/米)C
57『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1』(2013年/米)A
56『FBI:特別捜査班 シーズン1 #8主権を有する者』(2018年/米)C
55『FBI:特別捜査班 シーズン1 #7盗っ人の仁義』(2018年/米)B
54『FBI:特別捜査班 シーズン1 #6消えた子供』(2018年/米)B
53『FBI:特別捜査班 シーズン1 #5アローポイントの殺人』(2018年/米)A
52『アメリカン・プリズナー』(2017年/米)D
51『夜の訪問者』(1970年/伊、仏)D
50『運命は踊る』(2017年/以、独、仏、瑞)B
49『サスペクト−薄氷の狂気−』(2018年/加)C
48『ザ・ボート』(2018年/馬)B
47『アルキメデスの大戦』(2019年/東宝)B
46『Diner ダイナー』(2019年/ワーナー・ブラザース)C
45『ファントム・スレッド』(2017年/米)A
44『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年/米)B
43『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年/米)A
42『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年/米)A
41『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
40『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
39『下妻物語』(2004年/東宝)A
38『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
37『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
36『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
35『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
34『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
33『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
32『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
31『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
30『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
29『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
28『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
27『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
26『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
25『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
24『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
23『大脱出2』(2018年/中、米)D
22『大脱出』(2013年/米)B
21『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
20『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
19『グリーンブック』(2018年/米)A
18『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
17『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
16『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
15『海にかかる霧』(2014年/韓)A※
14『スノーピアサー』(2013年/韓、米、仏)A※

13『前科者』(1939年/米)
12『化石の森』(1936年/米)B
11『炎の人ゴッホ』(1956年/米)B※
10『チャンピオン』(1951年/米)B※

9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A


スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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