スーパーには毎日行きたい、と言うオッサンもいるんだよ

最近、めっきり観光客が減った近所の観光名所、毘沙門天と善国寺

世の中がこんなことになるずっと前から、僕は毎日のようにスーパーマーケットで買物をしている。
独り暮らしゆえ、自分で食材を買いに行かないと誰も買ってくれないし、自分で料理を作らないと誰も作ってくれないので。

二口以上ある家族持ちと違い、一口しかないと、それほど大量に生鮮食料品を買い溜めするわけにはいきません。
肉も魚も野菜も足が早いから、買える量はせいぜい1〜2日分くらい。

カップ麺や冷凍食品なら長期保存が効くけれど、潜水艦や宇宙船の乗組員ならともかく、そんなものを毎日食べる気にはとてもなれない。
ただでさえコレステロール値の高い57歳、悪い影響もありそうだし、独居生活が長いから、それなりに自炊や料理(というか家事全般)もできるしね。

僕が毎朝8時前後に朝散歩しているのは、ついでにスーパーに寄って、冷蔵庫から無くなりかけている食材や飲料を補充するためでもある。
店によっては、その時間に食材の仕入れが行われているので、結構新鮮なものが手に入るんですよ。

仕事を一段落させた午後、切らした調味料があることに気づいたりして、晩飯時の前にスーパーに行ってみると、やっぱり結構ごった返している。
だから余計、混雑する時間帯を外し、朝に買い出しすることが重要になるわけです。

そうしたら、都や政府がちょっと前から、「昼飯前後、晩飯前の買物はなるべく控えるように」と、〝時間差買物〟の奨励を始めた。
まあ、当然かもな、じゃあ午後の買物は早めに行くかと、きょうの午後3時前に神楽坂のスーパーに行ったら、メチャ混みとは言わないまでも、かなりの人出。

とくに、この時間帯から〝できたて〟が並べられるお惣菜コーナーに押し寄せるお客さんが多く、マスクをしていない人もチラホラ。
要は、このあたりに住む都民の多くが、お上の奨励に倣ったため、こんな傍迷惑なことになったわけです。

都や政府から何らかの〝お願い〟が出されるたび、こういう逆効果が生じる。
そこへもってきて、小池都知事がきょう、また新たな〝お願い〟を行った。

「スーパーでの買物は3日に1度程度にして頂きたい」
「食料は十分に供給されているので、〝買い占め〟はやめて頂きたい」

でもね、二口以上の家族を持つ主婦(もしくは夫や子供や祖父母)が、「3日に1度」しかスーパーに行けないと、今度はそのたびに3日分の食材を買い溜めする必要が生じるでしょ。
当然、そういうお客さんの買物カゴは食材で一杯になり、レジで精算する時間も長くなり、その後ろでソーシャルディスタンスを守っているお客さんの列もどんどん後ろへ延びていく。

ということぐらいは、ヤモメ暮らしが長くて、しがないフリーの物書きの僕にも容易に想像がつくよ。
実際、神楽坂でもすでにその兆候はある。

毎週日曜朝の〝安売り朝市〟を行っていたスーパーは、混雑と行列が生じることを理由に、この特売を中止してしまった。
この朝市では玉子10個入りパックが100円で買えたから、ヤモメのA先生としては実にイタイ。

たぶん、小池都知事が自分でスーパーに行くことは、あまり、と言うか、まったくないだろう。
そういう人が都民に対し、外出自粛に加え、スーパーでの買物まで控えるよう、強い調子で求めるのはいかがなものか、と言いたい都民は僕だけではないはずです。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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