無観客試合から球音が聴こえる

東京ドームの22ゲートに表示されたお知らせ

きょうの取材は午前と午後の2本立てで、まず午前の部はさる球界OBへのロングインタビュー。
ガチガチに緊張し、背広を着て指定された渋谷のホテルへ出かけ、ラウンジの個室でじっくりお話をうかがいました。

午後の部は東京ドームで、史上初の無観客試合となったオープン戦、巨人−ヤクルト戦を取材。
報道陣にはきょうからマスク着用、入り口での検温とアルコール消毒が義務付けられるなど、物々しい雰囲気が漂う。

最初のうち、観客のいない中での試合にはやはり違和感を感じた。
しかし、試合後に取材した両チームからは、意外にも「試合に入るとそれほど気にならなくなった」という声が聞かれた。

巨人は新外国人投手、先発の柱にと期待されるサンチェス、リリーフ候補のビエイラがともに2失点。
支配下登録されたばかりの長距離砲モタも、さっそくホームランを打っていたのはいいが、外野守備でフライを長打にしてしまうミスをしでかした。

ヤクルトはベテラン青木が3打数2安打と好調な仕上がりを見せたものの、開幕投手の期待がかかる高橋が2失点とピリッとしない。
両チームともに課題と不安が多いため、観客がいないことを気にしている場合ではなかったのかもしれません。

なお、この無観客試合にもいいところがひとつある。
それは、投手の球がミットに収まる音、その投球を打者が打ち返すバットの金属音がはっきりと聴こえてくること。

ベンチで選手たちが出している声も記者席まで響いてくる。
ふだんは応援団の鳴り物にかき消されている「球音」が実に新鮮だった。

巨人では20年以上前、私設応援団に協力を要請し、鳴り物を自粛してもらって「球音を楽しむ日」を実現させたことがある。
大勢のお客さんが入った中、力強い捕球音、鋭い打球音が鳴り響く東京ドームでの試合観戦(取材ですが)は実に快適だった。

この企画は大ヒットだ!
と、当時勤務していた日刊ゲンダイの最終面で絶賛する記事を書き、珍しく球団広報部長にも大変感謝されたものです。

応援団の鳴り物を全面的に否定するわけではありません。
が、無観客試合をスタンドの記者席から見ていて、たまにはこういう雰囲気の中で野球を見るのもいいかな、と思った午後の部の取材でした。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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