『チャンピオン』(セルDVD)😉

Campion 98分 1949年 アメリカ=ユナイテッド・アーティスツ
日本配給:1951年 大映洋画部

今月5日、103歳で亡くなったカーク・ダグラスが初めてアカデミー主演男優賞にノミネートされた69年前の作品。
前項『カーク・ダグラス自伝 くず屋の息子』(1989年/早川書房)を読んで興味を抱いた矢先、神楽坂の書店〈文悠〉で391円(税込)で売られている廉価版DVDを見つけて購入した。

原作はハリウッド・テンのひとりリング・ラードナー・ジュニアの父親で、スポーツライターとして有名なリング・ラードナーによる傑作短編。
ずいぶん昔に翻訳を読んで、いまもハードカバー版を所有していることを、DVDを見たあとで思い出した。

ダグラス演じる主人公ミッジ・ケリーは極めて上昇志向が強く、居候を決め込んだダイナーの娘エマ(ルース・ローマン)と結婚しながら、ボクシングのチャンピオンを目指してトンズラ。
人の好い実の兄コニー(アーサー・ケネディ)や愛人グレース(マリリン・マックスウェル)を踏み台にしてのし上がってゆく。

ダグラス自身は学生時代にレスリングをしており、俳優として不遇だったころに主役に抜擢された作品で、文字通り体当たりの熱演を披露している。
クライマックス、熱戦の末に王座を防衛したダグラスがドレッシングルームで高笑いしながら自画自賛を続けるうち、狂気に蝕まれてゆく演技は圧巻。

ダグラスは本作で一躍オスカーに手が届きそうなところまで上り詰め、ハリウッドのスターダムへ駆け上がってゆく。
本作の劇場公開当時、まだ5歳だった長男マイケルは、38年後に『ウォール街』(1987年)で稀代の悪役ゴードン・ゲッコーを熱演し、父親が手中にできなかったアカデミー主演男優賞を獲得した。

つまり、あのゲッコーはミッジの息子であり、ミッジはゲッコーの原型であるとも言える。
リチャード・ウィドマークの『街の野獣』(1950年)あたりとともに、もっと再評価されていい作品ではないだろうか。 

オススメ度B。

(旧サイト:2016年11月6日付Pick-upより再録) 

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだったら😑
※ビデオソフト無し

9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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