〝韓国の大谷〟姜白虎のファウルボール

五回に東スポの記者席を直撃したプレミア12の公式試合球(SSK社・スリランカ製)

今年最後のプロ野球国際試合、プレミア12もいよいよ大詰め。
きのう16日はスーパーラウンド(決勝リーグ)最終戦、日本🇯🇵−韓国🇰🇷の取材に行ってきました。

両チームはすでにきょうの決勝戦で対戦することが決まっているため、きのうの試合にどうしても勝たなければならない理由はなかった。
きょうの決勝戦に負けたら何にもならないから、むしろ主力選手を温存し、手の内を隠しておく必要があった。

という台所事情はファンも先刻承知だったとは思いますけどね。
日本、韓国ともに先発投手がボコボコに打ち込まれ、次々に失点を重ねてもなかなかベンチが動かなかったのはいかがなものか。

先に崩れたのは韓国の李承鎬(イ・スンホ)のほうで、二回に外崎修汰にタイムリーを打たれて先制を許すと、三回には1死も取れないまま2点を追加され、無死満塁で降板となった。
ここから登板した2番手・李庸燦(イ・ヨンチャン)も松田宣浩に押し出し四球、會澤翼にタイムリー、山田哲人に犠牲フライと、韓国はこの回、打者一巡されて一挙6失点。

侍ジャパンの岸孝之もメロメロで、三回に黄載均(フォン・ジェギュン)のソロ本塁打で1−1の同点に追いつかれると、四回には打者9人の猛攻を浴びて一挙5失点、計6失点で7−6と1点差に。
それでも案の定、稲葉篤紀監督が三回いっぱいまで岸を引っ張ったものだから、見ているこっちは眠くなってきちゃった。

で、やっと岸が降板した五回、2番手の大野雄大もピリッとせず、先頭打者から3連続四球であっという間に無死満塁の大ピンチ。
1死を取って姜白虎(カン・ベクホ)が打席に入ると、カウント1−1から内角へのスライダーを打ちにいき、ファウルになった打球が三塁側内野席の記者席へ飛び込んできた。

放物線を描くフライならある程度は余裕を持って対応できるが、この打球は低い弾道を描き、スタンドの観客の頭上をかすめるようにして私のいる東スポの記者席へ。
これは怖かったよ。

あっ、ぶつかる、と思った次の瞬間、咄嗟に頭を伏せた直後、打球はたぶん5〜10㎝ほど横を通過して後ろの壁にガツン!
机の上に跳ね返り、私のスコアブックの上へ転がった。

ちょうど、上の画像にほぼ近い位置。
画像はこのブログ用に改めて撮ったものですが、実際に転がってきて止まったのもこのへんでした。

もし5〜10㎝ずれていたら、頭かパソコンを直撃されていた可能性が高い。
現に、この記者席では過去にも、記者の身体やパソコンにファウルボールがぶつかっている。

でも、まあ、そういう危険度はお客さんのいるスタンドも同じ。
仕事で野球を見ている以上、打球の行方から目を切らないのは記者の基本的心得でもあるのだから、いちいちビビっていてはいけません。

ちなみに、このファウルを打った姜白虎は韓国プロ野球のKTウィズで3番を打つ高卒2年目20歳の逸材。
昨年は日本の新人王に当たるルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、今季も打率3割3分6厘、13本塁打、65打点の成績を残している。

ソウル高校時代は外野手と投手の二刀流で、速球は150㎞台、スライダーでも140㎞台を記録。
「韓国の大谷翔平」と騒がれていたのみならず、ときには捕手としてもプレーしていたそうです。

きのうの試合ではタイムリーヒット2本を打って2打点をマークし、試合後の記者会見にも金卿文(キム・ギョンムン)監督とともに登場。
試合の感想を聞かれると、「きょうはスタメンだったのでものすごく緊張していましたが、監督、コーチ、先輩たちに助言していただいたおかげで良い結果を出すことができました」と、実に初々しくコメントしていました。

さて、きょうはいよいよ決勝!
頑張れ、侍ジャパン!

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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