『皆殺し無頼』(NHK-BS)

Johnny Yuma/101分 1966年 イタリア 

NHK-BS〈プレミアムシネマ〉は時折、こういうよほどのマニアでない限り記憶しておらず、興味も示さないような大昔のマカロニウエスタンを放送する。
本作はマカロニブーム初期の作品で、主演はハリウッドからイタリアに渡ったアメリカ人マーク・ダモン、監督・脚本はイタリアのB級アクション専門の職人ロモロ・グエリエリ。

こういう映画は観始めてから失敗した、時間の無駄になっちゃう、と思いながらそれでも最後まで観てしまう、というケースが少なくないのだが、本作はそこまで捨てたものでもない。
実際、劇場公開時に〈スクリーン〉に掲載された双葉十三郎の批評『ぼくの採点表』、マカロニウエスタンの虎の巻とも言える二階堂卓也の著書『マカロニアクション大全』でもそこそこの評価を得ている。

牧場主トーマス・フェルトン(レスリー・ダニエル)の妻サマンタ(ロザルバ・ネリ)は兄ペドロ(ルイジ・ヴァンヌッキ)と謀り、莫大な財産目当てに夫トーマスを殺す。
サマンタはさらに、子供のいないトーマスが財産を甥のジョニー・ユマ(ダモン)に相続させようとしていたことを知り、昔の愛人キャラダイン(ローレンス・ドブキン)にユマの殺害を依頼する手紙を送った。

一方、ユマとキャラダインは偶然居合わせた酒場での乱闘騒ぎをきっかけに意気投合し、互いの拳銃とガンベルトを交換するほどの仲になる。
この交換したベルトのイニシャルが元でキャラダインと勘違いされたユマは、サマンタの使者から手紙を渡されると、そのままキャラダインと偽ってフェルトン家にやってきた。

クライマックスでは、ユマとキャラダインが協力し合って約20人のペドロ一味をバッタバッタと撃ち倒す。
ヒネリが効いているのはこの先で、キャラダインは一度はサマンタを殺そうと決意するのだが、いざ昔の愛人だった彼女を目の前にすると躊躇してしまい、隙を突かれて返り討ちに遭う。

サマンタは水筒2個を携えで馬車に乗り込み、キャラダインの銃撃をかわしてフェルトン家から逃亡。
ユマが駆けつけたとき、キャラダインはすでに絶命したあとだった。

ところが、その数日後、ユマは砂漠で転倒した馬車とサマンタの死体を発見。
そばに転がった水筒にはキャラダインの銃弾による穴が空いており、水をなくしたサマンタはここで渇きのために死んだのだとわかる。

残酷描写が売り物のマカロニにしては悪女をきれいに葬っており、なかなか気の利いたオチと言っていい。
キャラダインを演じたドブキン、主役のダモンはどちらも好演で、その後も何本かマカロニに出演している。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し

90『バリー・シール アメリカをはめた男』(2017年/米)A
89『スマホを落としただけなのに』(2018年/東宝)C
88『アントマン&ワスプ』(2018年/米)A
87『アイアンマン』(2008年/米)A
86『ミクロの決死圏』(1966年/米)C
85『クレオパトラ』(1963年/米)C
84『瞳の中の訪問者』(1977年/東宝)D
83『HOUSE ハウス』(1977年/東宝)C
82『マザー!』(2017年/米)B
81『アリー・イン・ザ・ターミナル』(2018年/米、英、愛、洪、香)D
80『ヴェノム』(2018年/米)B
79『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(2018年/米)B
78『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(2015年/米)A
77『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(2011年/米)C
76『M:i:Ⅲ』(2006年/米)B
75『M:i-2』(2000年/米)C
74『ミッション:インポッシブル』(1996年/米)C
73『ダンテズ・ピーク』(1996年/米)C
72『スーパーマン4 最強の敵』(1987年/米)D
71『スーパーマンⅢ 電子の要塞』(1983年/米)C
70『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』(2006年/米)B
69『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980年/米)A
68『スーパーマン ディレクターズ・カット版』(1978年/米)A
68『MEG ザ・モンスター』(2018年/米)C
67『search/サーチ』(2018年/米)A
66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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