『ミクロの決死圏』(NHK-BS)

Fantastic Voyage
111分 1966年 アメリカ=20世紀フォックス

この映画を初めて観たのも地上波テレビの日本語吹替版で、1979年のフジテレビ『ゴールデン洋画劇場』か1980年のテレビ朝日『日曜洋画劇場』だったと思う。
前者は高橋昌也、後者は鈴木瑞穂というベテラン俳優がデュヴァル博士役のアーサー・ケネディを吹き替えていた。

東西冷戦時代、東側の科学者ヤン・ベネシュ博士(ジーン・デル・ヴァル)がアメリカに亡命した直後、東側の追っ手に襲われ、脳内出血を起こして昏睡状態となった。
米軍と医療チームは脳内の血塊を取り除くため、脳外科医を原子力潜航艇プロテウス号に乗せてミクロ化し、ベネシュ博士の体内に送り込む。

この脳外科医がデュヴァル博士(ケネディ)で、美人助手のコーラ(ラクウェル・ウェルチ)、医学部長兼隊長マイケルズ(ドナルド・プリーゼンス)、操縦士オーウェンス大佐(ウィリアム・レッドフィールド)、それに主人公の護衛役チャールズ・グラント(スティーブン・ボイド)が随行。
ミクロ化の効果は1時間しかもたないので、その間に頸動脈からベネシュ博士の体内に侵入し、脳の中に辿り着いて血塊をレーザー手術で取り除かなければならない。

高校生のころは体内のファンタジック・ボエジー(原題)を描いた特撮、次から次へと襲いかかるピンチの連続に手に汗握ったものだ。
が、さすがにCG全盛のいま観ると、特撮の粗が目につき、ゆったり、まったりした映画だなあ、という印象が先に立つ。

意外に好演しているのが、この作戦の指揮を執るカーター将軍役のエドモンド・オブライエン。
オペレーション・ルームでコーヒーを飲むたびにどっさり砂糖を入れるのだが、こぼした砂糖の上を這う蟻を潰そうと指を伸ばした次の瞬間、ふと躊躇いを感じて蟻を逃がす。

蟻をミクロ化した潜航艇になぞらえた場面で、傍らで見ていた医師兼作戦主任のドナルド・リード大佐(アーサー・オコンネル)がカーター将軍に「ヒンドゥー教か?」と聞く。
一瞬、首を捻ったカーター将軍に、「すべての命は等しく尊い」と答えるリード大佐のセリフがまた印象深い。

原作はなく、映画のための原案はオットー・クレメントとジェイ・ルイス・ビグスビー、脚本はハリー・クレメント、デヴィッド・ダンカンが担当しているが、いずれもどのような映画人だったのかはよくわからない。
監督は本作の12年前にディズニーで『海底二万哩』(1954年)、3年後には『トラ・トラ・トラ!』(1970年)を撮った職人リチャード・O・フライシャー。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し

85『クレオパトラ』(1963年/米)C
84『瞳の中の訪問者』(1977年/東宝)D
83『HOUSE ハウス』(1977年/東宝)C
82『マザー!』(2017年/米)B
81『アリー・イン・ザ・ターミナル』(2018年/米、英、愛、洪、香)D
80『ヴェノム』(2018年/米)B
79『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(2018年/米)B
78『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(2015年/米)A
77『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(2011年/米)C
76『M:i:Ⅲ』(2006年/米)B
75『M:i-2』(2000年/米)C
74『ミッション:インポッシブル』(1996年/米)C
73『ダンテズ・ピーク』(1996年/米)C
72『スーパーマン4 最強の敵』(1987年/米)D
71『スーパーマンⅢ 電子の要塞』(1983年/米)C
70『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』(2006年/米)B
69『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980年/米)A
68『スーパーマン ディレクターズ・カット版』(1978年/米)A
68『MEG ザ・モンスター』(2018年/米)C
67『search/サーチ』(2018年/米)A
66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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